日本では、約15人に1人が生涯に1度はうつ病を発症すると言われています。
欧米に比べると割合が低いものの、国内におけるうつ病の患者数は増加傾向にあり、2002年に71万人程度だったものが2017年には127万6千人にまで増加。2019年以降のコロナ禍をきっかけにうつ病患者はさらに増加し、2024年には躁うつ病を含めたうつ病患者数が169.3万人まで増加したことが厚生労働省より発表されました。
人はなぜうつになるのでしょうか?
また、どうすればうつを防ぐことができるのでしょうか?
今回は、うつになる原因と対策に迫り、うつの回復に有効な3つの要素をご提案します。
うつになる原因と対策

うつになる一番の原因は「ストレス」と言われています。
性格や遺伝的要因を指摘する説もありますが、一卵性双生児で二人ともうつを発症する確率が40%程度といわれているので、性格や遺伝よりも「生育や環境により形成された価値観や考え方(つまり後天的な性格)」が大きく影響していると考えられます。
また、ストレスの中でも特に、大切な人や物を失う喪失感や、人間関係のトラブル、持病や経済的困窮などが、うつ病を発症するきっかけになりやすいといわれています。
うつになるきっかけは人それぞれですが、たとえば幸福の代名詞である結婚や出産をネガティブに捉えている人は、結婚や出産を機にうつを発症する可能性があります。
厚生労働省の調査によると、2023年の日本における自殺の理由としてもっとも多いのが「健康問題」です。次に「経済・生活問題」で、「家庭問題」「勤務問題」と続きます。うつ病との相関は想像に難くありません。
では、うつ病を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
うつ病を予防する3つの要素

うつを予防するには、心の健康を保ってくれる要素を暮らしの中に取り入れるのが効果的です。
ここからは、うつ予防のために取り入れたい「心の健康を保ってくれる3つの要素」について解説します。
1.コントロール感
コントロール感とは、端的に言うなら「「物事を自分でコントロールできる」という実感に伴う心の余裕」のことです。
「“がん”はなぜ治るのか ~がんが治癒した5つの事例~」で詳しく解説していますが、人間は希望を失ったり絶望したりすると免疫力が低下し、持病が悪化する傾向があります。逆に、希望を持つと困難な病を克服することも可能です。「自分ならやり遂げられるはずだ」「自分にはできるはずだ」という自信や希望といったコントロール感は、心の病であるうつ病を予防する一番の薬と言えるでしょう。
逆にコントロール感を持たない人は、人生の目的や意義、自分の能力などを過小評価し、悲観的になる傾向があります。うつ症状を発症しやすく、うつにより悲観的な思考に陥るとコントロール感がいっそう失われる──という悪循環に陥り、病状を悪化へと導いてしまいやすいのです。
コントロール感を養うには、抗体源をできるだけ多く取得するのがおすすめです。
抗体源については「抗体源とは? 抗体源を増やして免疫力を高める方法を解説」にて詳しく解説しています。併せてご覧ください。
2.希望
希望も、心身の健康を大きく左右する要素の一つです。心と体のコンディションは意外と気分や気持ち、思い込みなどに依存していますから、希望という前向きな感情を持つだけで、コンディションが快方に向かいやすくなります。
たとえば、暗く陰鬱な雰囲気の精神病棟に10年にわたり入院していた女性が、施設の改築に伴い、明るく楽観的な雰囲気の病棟に移動した際、すぐに楽天的な性格に変わったという例があります。しかしその後、改装工事の完了に伴い元の病棟に戻ると、病状が改善していたにもかかわらずすぐに亡くなってしまいました。
希望を持つための方法や手段は人それぞれですが、自分が抱える問題を解消する方法を、具体的かつ論理的に追究するばかりが策ではありません。一見すると疑似科学的ではありますが、環境を変えて気分を変えてみたり、趣味に没頭してみたり、深刻に考えるのをやめていっそ開き直ってみたりするだけで、心身のコンディションが改善することがあります。
これは、実は免疫学の業界ではよく知られている人間の生態的な反応です。
なお、「社会的支援」とはサポートを受けられる関係や互助関係に基づく人間関係のことです。たとえば友達や恋人、ご近所さんなど地域の人々、行政窓口やソーシャルワーカー、かかりつけ医、顧問弁護士、会社の同僚や上司、両親や親戚など、自分を支えてくれるすべての人を指します。
人とのつながり(つまり社会的支援)を持つ人は、心身が健康的なだけでなく、健康に対してより肯定的な考えや感情を持つ傾向があることもわかっています。
さらに、「あきらめが生命力を奪う「あきらめ症候群」のリスク」で詳しく解説していますが、強力な支援が得られる人は仮に喫煙・食べ過ぎ・運動不足でも、病気になる確率が低いこともわかっているのです。
つまり、健康的に生きるには人とのつながりや助け合いが欠かせないということであり、さらには「幸せに生きるには良質かつ濃密な人間関係を築くのが有効である」ということでもあります。
とはいえ、必ずしもたくさんの友達を作ったり結婚したり家庭を持ったりしなければならないわけではありません。最愛のパートナーがいるならそれに越したことはありませんが、社会的支援をどう得るかは人それぞれです。行きつけの飲み屋を持つのもいいですし、SNSで気の合う仲間と出会い、小さなコミュニティを形成するのもいいでしょう。
言い方を変えるなら、「人と関わり孤独感を減らすことで心身のコンディションが高まりやすい」ということでもあります。また、習慣や環境を変えるだけでも心の健康を保ちやすくなりますし、実際に習慣や環境の変化から刺激を得ることで、寿命が延びたり精神的鋭敏さが磨かれたりすることが動物実験などからもわかっています。
退職した年配者のケースにおいても、退職後も仕事に興味を持ち続ける人は体が健康なだけでなく、脳の衰えも見られなかった──という調査報告があります。
希望を持って健康的に生きるために、自分を支えてくれる人たち(社会的支援)とのつながりを大切にしましょう。
3.愛
「愛」は科学的に定義し難い抽象的な概念ですが、私たちの健康や人生に必要不可欠な重要な要素であることは、誰しも感覚的に理解しているのではないでしょうか。
実は、愛が人体にどのような影響を及ぼすか、科学的に解明されている部分もあります。たとえば、愛情や気遣いなどが発生した時、その人の唾液中のIgAレベルが上昇することがわかっています。
IgAとは免疫グロブリンA(immunoglobulin A)の略で、病原体やウイルスの侵入を防ぐ抗体の一種です。
IgAは、体内で2番目に多い免役グロブリンで、主に唾液や鼻水、涙腺、消化管、膣などの粘膜に存在しています。また、母乳のうち、とりわけ栄養価が高いとされている初乳にも含まれています。
我が子を愛でたり、誰かを愛したりする際に増加するこの抗体は、情愛や慈愛といった感情が人体にポジティブな反応を起こすことを示しており、逆に無力感を感じるとIgAが低下することから、気分や感情が人体の免疫機能の一部を司っている科学的根拠の一つといえます。
愛を獲得するには、恋愛や結婚、妊娠や出産や育児の他、前項で解説した「社会的支援」同様、友人や地域住民、会社の仲間など、特定の人との信頼や絆、友情を育むことでも可能です。
うつを遠ざける「愛他主義的エゴイスト」
米国ストレス研究所(American Institute of Stress, AIS)の議長を務めたこともあるポール・ロッシュ(Paul J. Rosch)博士は、「楽しくて誇りが持てることをしたり、他人を喜ばせたりすることは、健康に非常に良い」と主張しています。
他人の役に立つことをし、人から喜ばれ、感謝されることで、自分も幸福感を得る。このような、いわゆる「愛他主義的エゴイスト」は、健康的な生活を送り、長生きする傾向が高いと言われています。
自分の健康のためだけでなく、周囲の大切な人の幸福のためにも、愛他主義的エゴイストを目指してみてはいかがでしょうか。
愛他主義的エゴイストの詳細については、「幸運を引き寄せる「愛他主義的エゴイスト」とは」の記事をご覧ください。
【参考サイト】
・地域におけるうつ対策検討会「うつ病を知っていますか?(国民向けパンフレット案)」
・V-NET「うつ病の現状」
・サワイ健康推進課「うつ病」
・八王子メンタルクリニック「うつ病の原因はなんですか?」
・やさしいLPS「免疫におけるIgA抗体の働きとは?長所や存在する場所などを詳しく解説!」


