“言葉”の偉大な力│免疫力を「上げる言葉」と「下げる言葉」

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意外に思われるかもしれませんが、「言葉」には免疫力を上げたり下げたりする力があります。ある言葉を口にすると免疫力が上がり、ある言葉を口にすると免疫力が下がるのです。

嘘のような話ですが、これはスピリチュアル的でも疑似科学的でもなく、実は科学的に裏付けられているれっきとした事実です。

今回は、「言葉」が免疫機能にもたらす影響と、「免疫力が下がる言葉」「免疫力が上がる言葉」をそれぞれご紹介します。

免疫力を下げる言葉

はじめに、免疫を下げる言葉をいくつかご紹介します。以下のように無力感やあきらめを表現する言葉は、ストレスホルモンの過剰分泌を促し、免疫機能を低下させます。

「人生には生きる価値などない」
「問題の解決に終わりがないように感じる」
「どうしてこうもうまくいかないのか……」
「次から次へとトラブルばかり起きる……」
「何のために闘えというんだ?」
「もう耐えられない」
「もう無理だ……」

このようなネガティブな言葉を口にすると、人体機能的な反射として、脳がストレスホルモンを分泌します。ストレスホルモンが分泌されると、落ち込んだり抑うつ的になったりなど、メンタル面に悪影響が表れやすくなります。さらに、免疫力が低下することで、メンタルだけでなく身体的なコンディションも低下し、体が炎症を起こしたり細菌に感染したりなど、心身共にパフォーマンスが落ちるのです。

また、脳の特性を利用したリラクセーション法として、「アファメーション」というテクニックがあります。これは「肯定的な自己宣言」とも呼ばれており、言葉で自分自身に自己暗示をかける方法で、通常は「私は大丈夫」「私は何も問題ない」「私は乗り越えられる」など、ポジティブな言葉を自分自身に投げかけます。こうすることで脳が言葉通りに機能し、メンタルが安定したりパフォーマンスが向上したりするのです。

先述したネガティブな言葉を口にする行動は、ネガティブな方向の自己暗示をかける、一種のアファメーションと言えるでしょう。

このようなメカニズムで、無力感やあきらめの言葉には、メンタルだけでなくフィジカルにも悪い影響を及ぼす可能性があります。弱音を吐きたくなっても堪え、むしろそういう時こそポジティブな言葉を口にするよう意識しましょう。

免疫力を上げる言葉

次に、免疫力を上げる言葉の例をご紹介します。

「大丈夫」
「少しずつ前に進んでいる」
「ありがとう」
「きっと乗り越えられる」
「今この瞬間を楽しもう」
「私には幸せを見つける力がある」
「人生を楽しもう」

こちらはれっきとしたアファメーションのテクニックです。ポジティブな言葉を自分自身に投げかけると、脳幹網様体賦活系(RAS)が刺激され、ポジティブなものに注意を向けやすくなります。

さらにこれを繰り返すことで、神経可塑性によりポジティブ思考の神経回路が強化され、ネガティブ思考からポジティブ思考へシフトしやすい脳の体質が形成されます。これは、脳の「リプログラミング」という機能による現象です。

ポジティブ思考が定着すると、物事を楽天的に捉えたり、窮地に置かれても希望を見出したりしやすくなるため、メンタルが安定します。結果的に免疫力も強化され、病気になりにくい良好なコンディションを維持しやすくなります。

日本には昔から「言霊(ことだま)」という概念があります。「発した言葉には特別な力が宿り、やがて現実化する」という概念です。しかし、現実的には言葉に力が宿っているわけではなく、もしかすると人間の脳機能の妙によって誕生した概念なのかもしれません。

ポジティブな言葉を口にできない時は

よほどショッキングな出来事が起こったり、消耗し過ぎたりすると、なかなかポジティブな言葉を口にできなくなるものです。そんな時は、どのように対策すればいいのでしょうか。

結論から言うと、「コントロール感」を獲得することが大切です。コントロール感は、「プラン」「ビジョン」「代案」などと言い換えることもできます。

災難が立て続けに起こっても、その災難に立ち向かう術や、リカバリーする知恵を持っていれば、前後不覚に陥ることがありません。たとえダメージを受けたとしても、ダメージを回復させる手を打てばいいだけだからです。

しかし、人によって持っている手札の枚数も違えば、手札の種類も違います。中には災難を予防したり対策したりするための手札を一枚も持っていない人もいるかもしれません。ですが、そういう人でも最終的には家族や専門家、専門機関の窓口などの「他人を頼る」という手札を持っています。

手札を持っている限りは状況をある程度自分でコントロールできます。この「自分はまだコントロールできる」という自信と安心が希望や期待の源泉であり、ひいては免疫力の源でもあります。

ポジティブな言葉を口にできなくなってしまったということは、おそらくショックを受けたり、自分には手札がないと思い込んでしまっていたりするからでしょう。

前者は時間の経過で自然に回復できますが、後者は何とかして手札を増やしたり、自分が手札を持っていることを自覚したりする必要があります。

たとえば無人島に漂着してしまっても、自力で水や食料を確保する知恵を持っている人は、即座には絶望しないでしょう。しかし、サバイバル術をまったく知らない人は、自分が漂着した土地が無人島と知るや否や絶望し、自ら命を絶ってしまうかもしれません。

実際にこのようなケースと似た状況が難民キャンプ等で確認され、手札を失った人々(つまりコントロール感を失った人々)の病の発症率や自殺率の高さを報告するデータもあります。詳しくは「あきらめが生命力を奪う「あきらめ症候群」のリスク」の記事をご覧ください。

ポジティブな人とネガティブな人の違い

人間は本能的に、失敗した時に失敗の原因を探る傾向があります。そして、ネガティブな人はその原因を、自分の永続的な欠点や自分の性格に起因するものだと考えたり、環境や状況や他人などに原因があると考えたりする傾向があり、「自分にはどうしようもない」という諦観を抱きがちです。

つまり「自分にはどうしようもないことが原因で災いが生じている」と考えるため、失敗するたびにその人はコントロール感を失い、自尊心も下がり、免疫力が低下します。

さらに、ネガティブな言葉を口にする習慣があると、自己暗示によりいっそう自己肯定感が下がり、悪い方向に脳がリプログラミングされ、ネガティブ思考で低いコンディションが慢性化してしまいます。

逆に、ポジティブな人は「自分で何とかできるはずだ」というコントロール感を大なり小なり持っている傾向にあります。「自分はこれからまだまだ変われる」「まだまだ成長できる」という感覚を持っているのです。

このポジティブな思考は、幸福感や達成感を得るために必要不可欠です。

たとえば、ケガをした理由を自分の行動のせいだと考える人は、そうでない人と比べて回復が早い傾向があり、リハビリの成果も自分の努力によるものであることをよく理解している傾向があります。また、自ら進んでリハビリに励む傾向もあります。

乳がんの原因を自分の行動のせいだと考える人にも、同じ傾向が見られたという報告があります。そういう人は病気を境に自分の行動を見直し、習慣やライフスタイルを積極的に改善したがります。「自分が体調不良になったのは自分のせいで、自分が原因を作った。だから自分でその原因を取り除けば、体調不良も回復するはず」と考えるわけです。つまり「コントロール感」を持っているのです。

逆に、病気を「自分ではどうしようもないこと」と考える人はうつ症状を見せる傾向があり、回復も遅い傾向があります。

ポジティブ思考を自分自身に定着させるには、問題と直面した時に「この問題を解消するために自分には何ができるか」を考えるようにしましょう。そして具体的なアイデアとプランをもって実行するのです。

落ちこみそうな時や挫けそうな時は、自分自身に前向きな言葉を投げかけてアファメーションを行い、脳をリプログラミングしましょう。

これを繰り返すうちに、次第にポジティブ思考を自然体で運用できるようになるはずです。

言葉選びは生き方選び

状況をポジティブに評価するか、それともネガティブに評価するか。すべてはそこから始まり、やがてその評価が言葉となり、言葉が感情を生み、感情が行動を作る──。

さらには行動が生理的反応や細胞の反応を引き起こし、体調に影響を与えるのが人体のメカニズムです。

つまり、心身の健康を保つ上では「物事をポジティブに評価するかどうか」や「どんな言葉を口にするか」が重要で、判断を誤ると病気になったり寿命が縮まったりするリスクすらあるということ。

本記事で解説したように、体は心のメッセージ通りに反応します。

健康的で幸せな人生を歩むために、言葉はしっかりと選びたいところです。

【参考サイト】
脳科学辞典「脳幹網様体賦活系」
脳科学辞典「神経細胞リプログラミング」
J-STAGE「アファメーションの心理学と超心理学(<特集>第38回日本超心理学会大会)」