睡眠不足のせいで十分なパフォーマンスを発揮できなかったり、体調不良に陥ってしまったりといった経験は、おそらく誰にでもあるでしょう。また、このような経験から、睡眠不足が体力低下や免疫力の低下を招くことを、感覚的に理解している人も多いはずです。
近年は睡眠に関する研究も発展し、メディアなどでも睡眠と免疫の関係について言及される機会が増えました。質の良い睡眠は免疫力を高める健康の秘訣で、逆に質の悪い睡眠は健康リスクを高めるということが既に周知の事実となっています。
しかし、それでもなかなか質の良い睡眠が得られずに悩んでいる人は多いようです。
今回は、睡眠と免疫の関係について解説すると共に、質の良い睡眠を得るために必要なことや、睡眠の質を下げる習慣を紹介します。
本記事をご覧の上で睡眠前の行動をほんの少し変えれば、今日からでも良質な睡眠が得られるかもしれません。
睡眠と免疫の関係

まずは睡眠と免疫の関係について簡単に説明します。
人間の体は、質の高い睡眠を取るとしっかり休まり、免疫システムが適切に調整されます。免疫細胞が効率よく働くことで病気に対する防御力が高まるため、風邪や感染症にかかりにくくなるのです。
一方、睡眠の質が低いと体が十分に休まらず、免疫細胞の働きが鈍くなります。結果、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなります。
簡単に言うと、質の良い睡眠は免疫システムを元気にし、悪い睡眠は免疫力を弱めてしまうということです。
特に深い睡眠(ノンレム睡眠)時は、免疫細胞の「T細胞(病原菌やウイルスを直接攻撃する免疫細胞)」や「マクロファージ(体内の異物や細菌を食べて処理する免疫細胞)」などが活性化します。また、睡眠中は体内で「サイトカイン(免疫細胞同士のコミュニケーションを助ける化学物質)」と呼ばれる免疫物質が分泌され、免疫反応を強化します。
免疫の仕組みについては、「免疫の仕組みとは? 免疫機能の働きと役割をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。免疫システムのメカニズムに興味がある方は、併せてご覧ください。
睡眠の質を高めるために必要なこと

睡眠研究の第一人者であり、世界的権威でもある柳沢正史氏は、良質な睡眠を取るためには「睡眠に良いことをする」よりも「睡眠に悪いことをやめる」という視点が大切だと述べています。
普段の睡眠の質がどのような要素によって低下しているのかを把握し、その要因を取り除くことで睡眠の質を高めていく方法が、良質な睡眠を実現する近道である──という視点です。
確かに、どれだけリラックスした状態で就寝できたとしても、快眠を妨げる要素が存在する限り、質の高い睡眠は得られません。
睡眠の質を高めるために努力しているにもかかわらず、睡眠の質が上がったという実感がなかなか得られない人は、そもそも睡眠の質を下げる要因を排除できていない可能性があるわけです。
次項では、睡眠の質を下げる5つの行動をご紹介します。心当たりがないかセルフチェックをしながら読み進めてみてください。
睡眠の質を下げる5つの行動

次に紹介する5つの行動は、睡眠の質を低下させる可能性が高い行為です。心当たりがある方は、今日からさっそく行動を改めましょう。
1.明るすぎる照明
寝室の明かりをつけたまま眠ると、睡眠の質が低下しやすいことはよく知られています。しかし、実は寝室の照明よりも重要なのが、就寝前に過ごす部屋(リビング・ダイニングなど)の照明です。
明るい環境にいると脳が覚醒し、入眠が妨げられやすくなります。ただでさえ日本の家庭の照明は、諸外国よりも明るいと言われています。就寝前の1~2時間ほどは、過ごす部屋の照明を落とすのがおすすめです。ムーディーな雰囲気のレストランやバーの間接照明程度の明るさをイメージして、光による刺激を軽減しましょう。
2.寝ながらスマホを見る
寝ながらスマートフォンを操作するのは、ブルーライトの影響で睡眠が妨げられやすいというのは皆さんご存知でしょう。とはいえ、最近のスマホは画面の明るさを自動調整してくれたり、ブルーライトをカットしてくれたりします。
実は本当に問題なのはブルーライトでなく、スマホから取得する情報の質なのです。
スマホでリラックスできる動画を流したり、就寝前のちょっとした時間を使って読み物に目を通したりといった、リラックスした状態でのスマホ操作は問題ありません。
しかし、ショート動画を連続して視聴したり、SNSにメッセージを投稿したりといった刺激的な行動は、脳を覚醒させ入眠を妨げる可能性が高いので注意が必要です。
就寝前にスマホを使用する場合は、脳の興奮を誘うような刺激的な情報を避けましょう。
3.動画を観ながら眠る
入眠のために、リラックスできる動画や音楽をかけるのは問題ありません。むしろ、スムーズな入眠を誘いやすい効果的な方法です。しかし、入眠後にも画面の光が部屋にちらついていたり、音楽や音が鳴っていたりすると、脳が刺激されて中途覚醒を誘ったり安眠を妨げたりする可能性があります。
雑音は安眠を妨げる重大な要素の一つですから、映画や音楽を流して寝る場合は、オフタイマーを利用するなどして工夫しましょう。
また、隣室の生活音や外の環境音などが耳に障る場合は、耳栓を装着したり防音カーテンを導入したりするのがおすすめです。
4.寝酒をして眠る
「お酒を飲むと寝やすくなる」と感じる人は多いようですが、実はお酒は睡眠の質を低下させます。
アルコールには確かに多少の催眠作用があるため、飲酒後に良い気分になって眠くなる人もいるでしょう。しかし、体内でアルコールが分解される段階になると、交感神経が活発になり、脳が覚醒しやすくなります。そのため、夜中に眠りが浅くなったり、眠れなくなったりしやすいのです。
また、アルコールにはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促す作用もあるほか、利尿作用もあるため、夜間にトイレに行く回数が増えて睡眠が中断されやすくなります。
5.眠くないのに布団に入る
良質な睡眠を取るには、眠くなってから布団に入るのがベストです。
眠くもないのに布団に入ると、「寝なきゃ」という焦りから余計に目が冴えてしまい、眠りにくくなってしまう可能性があります。
寝なければいけないのになかなか眠れないという経験は、きっと誰でも経験したことがあるでしょう。焦れば焦るほど脳が興奮状態となり、スムーズな入眠が遠のきます。
この場合はむしろ一度布団から出て、気分転換を図るのがおすすめです。ただし、ゲームやSNSでのメッセージ交換など、脳に刺激を与える行為は避けましょう。シャワーを浴びたり軽くストレッチをしたり、ヨガや瞑想、明日の準備などをするのがおすすめ。眠くなったら布団に戻りましょう。
「良い睡眠を取る」のではなく「悪い睡眠を取らない」こと
睡眠の質を向上させるために寝具にこだわったり、寝室の構造にこだわったりしている人は多いのではないでしょうか。もちろんそれらは決してムダではありません。ただ、睡眠の質を低下させている要因を排除しないことには、せっかくの工夫や設備が十分に機能しないのも事実です。
睡眠の質を高めたいのであれば、まずは「睡眠の質を低下させている要因を排除すること」を目指しましょう。
今回は、睡眠の質を低下させる要因として、以下の5つを紹介しました。
- 明かりをつけて眠る
- 寝ながらスマホを見る
- 動画を観ながら眠る
- 寝酒をして眠る
- 眠くないのに布団に入る
睡眠の質を高めたい場合は、まずは上記の「睡眠の質を低下させる行動」をやめることから始めてみてください。


