幸運を引き寄せる「愛他主義的エゴイスト」とは

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世の中には、さまざまな感性を持った人がいます。

自分勝手な人もいれば、博愛に生きる人もいます。自分勝手なように見えて実は慈愛の心に満ちた人もいれば、人懐っこく見えて実は独善的な人もいます。表面的に見えている表情や態度からはわからない「本質」を、誰しも大なり小なり持っているものです。

確かに人間はそういうものですし、多様性があるからこそユニークで面白い社会が形成されているのも事実です。

しかし、もし「その感性や性格によって健康リスクや寿命が変わる可能性がある」と言われたらどうでしょう?「少しでも健康的な人生を送れるよう、自分自身を見直したい」と思いませんか?

今回は、「利己的な生き方」と「利他的な生き方」それぞれの健康リスクと、心身ともに健康的な暮らしを送り、長生きするための秘訣をご紹介します。

健康に必要なものとは

健康に必要なものはいろいろあります。たとえば運動もそうですし、健康的な食事もそう。人とのつながりや生きがいも必要ですし、安心や安全といったセーフティーやインフラも、健康的なライフスタイルに欠かせないものです。

このように、健康に必要なものはたくさんありますが、今回は特に「愛」や「感謝」といった「人間関係から生じるポジティブな感情」に焦点をあてたいと思います。

というのも、「愛」や「感謝」といった「人間関係から生じるポジティブな感情」が私たちの暮らしにどれだけの影響を与えているのか、科学的かつ具体的に示される機会はほとんどありません。誰もが愛の心地良さや感謝したりされたりすることの喜びを体感として知ってはいるものの、実際にそれがQOLにどれほど寄与しているのか、正確なところはまだよくわかっていないのです。

しかし、統計に基づき「こういう生き方をする人は、こういう人生を歩む傾向がある」といった事実を観測することには成功しています。

たとえば、人を憎んで生きる人は精神的に満たされず、寿命も短い傾向があり、逆に多くの人と愛や喜びを分かち合って生きる人は精神的に満たされ、長生きする傾向がある──といった事実からわかるように、「愛」や「感謝」といった「人間関係から生じるポジティブな感情」が、心身の健康に貢献するのはどうやら間違いありません。

免疫学や脳科学的にも、これらを裏付けるデータや調査報告がたくさんあります。免疫学的には、愛や慈しみといった感情が働いた時に、その人の免疫力(具体的にはIgA抗体レベル)が一時的に上昇する現象が観測されていますし、脳科学的にも幸福ホルモンの分泌によりパフォーマンスが向上することがわかっています。

つまり、簡潔にまとめると「愛や感謝は免疫力を高める」ということに他なりません。

では、どのような人が愛や感謝を獲得し、健康的に生きやすいのでしょうか?

「利己主義者(エゴイスト)」と「利他主義者(アルトゥルイスト)」の観点から考察してみましょう。

利己主義者と利他主義者とは

利己主義者とは英語で「エゴイスト(Egoist)」といい、他人を顧みず自分の利益を優先するタイプの人間を指します。一般的には「自己中心的で自分勝手な人」と解釈されます。言うまでもなく人から敬遠されやすく、他人と愛を深めたり信頼関係を築いたりしにくい傾向があります。それゆえに孤独感にさいなまれたり、世の中を逆恨みして犯罪行為に走ってしまったりするケースも。

しかし、悪いことばかりではありません。利己主義者だからこそ「自分が欲しいものは必ず手に入れる」といった強烈な欲求に基づき、ラッセル車のような突進力を発揮することもあれば、他人の感情や事情などに左右されず、常に利己的ないし合理的な判断ができるという面もあります。

人から好かれにくかったり共感されにくかったりする傾向はあるものの、場合によってはその個性が強力な遠心力を生んだり、魅力的なカリスマ性として周りの目に映ることもあります。

一方、利他主義者は英語で「アルトゥルイスト(Altruist)」といい、自己の利益より他者の利益を優先するタイプの人を指します。日本人にはこのタイプが多いといいます。筆者はこれまでさまざまな国の方々と触れてきましたが、肌感としても日本人の利他的な国民性は突出しているように感じます。台湾の方々も、日本人とよく似て利他的で親切な方が多い印象ですが、世界標準で見ると利己的な人間が圧倒的に多い印象です。

利他主義者は自分より他人を優先しますから、協調性が非常に高く、個より全で物事を判断しようとします。反面、自分を大切にするのを苦手とする一面があり、自己主張ができなかったり、空気を読み過ぎて自分の意見を言うのをためらったり、「No」が言えなかったり、孤立を極端に恐れたりする傾向も。

利己主義と利他主義、どちらも一長一短ですが、それぞれの良いとこ取りをしたのが「愛他主義的エゴイスト」です。

もっとも長生きすると言われている「愛他主義的エゴイスト」

「愛他主義的エゴイスト(Altruistic Egoist)」とは「他者の利益や幸福を追求することで、最終的に自分の利益や満足感も得る人」 のことで、心身ともにもっとも健康的で長生きしやすいタイプといわれています。

愛他主義的エゴイストは、なぜ健康的に生きやすいのか?そして、どういう感性を持ち、どういう行動をとるタイプなのでしょうか?

はじめに、「愛他主義的エゴイスト」の字義的な意味を解説します。

愛他主義的エゴイストとは

愛他主義的エゴイストとは、文字通り「利他主義(Altruistic)」と「利己主義(Egoistic)」が掛け合わさったものです。わかりやすく言うと「他者の幸せこそ自分の幸せである」という感性を持ったタイプのことです。

しかしここで間違えてはいけないのは、愛他主義的エゴイストは「他者の幸福に依存しているわけではない」という点。

とりわけ日本人は依存的な利他主義者が多く、「他者の幸せに貢献できない自分には価値がない」という潜在的な意識を持っています。そのため、自分自身が幸せになる手段として他者の幸福に貢献する方法を選ぶ愛他主義的エゴイストと異なり、大半の依存的な利他主義者は「自分を自分自身の不安から解放するために他者を利用している」に過ぎません。

フタを開けると、実は「利他的な行動を取っている利己主義者」がほとんどなのです。

愛他主義的エゴイストは、他者の幸福に貢献するために多少の不安や代償を背負うのをほとんどためらいません。度が過ぎると、他人に尽くすことばかり考えて自分自身のことが疎かになってしまう可能性もあります。しかし、愛他主義的エゴイストは、本人も自覚しないうちに徳を積み、多くの味方や友人を持っているケースがほとんどです。ですから、困った時は誰かが手を差し伸べてくれます。こうした互助関係が、彼らのコミュニティの絆や信頼関係をいっそう強固にするのです。

つまり、愛他主義的エゴイストは、「人が幸せそうに笑っている姿が見たい」という自分自身の欲求に基づいたエゴイスティックな行動を取った結果、周りから感謝され愛され、人間関係を通して生じるポジティブな感情をも享受できる──というわけです。

なお、人間関係を通して生じるポジティブな感情が、いかに人の健康寿命に貢献するのかについては、アメリカはペンシルベニア州のロゼトという町で発見された「ロゼト効果」という現象を引き合いに「“がん”はなぜ治るのか ~がんが治癒した5つの事例~」で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

愛他主義的エゴイストの特徴

愛他主義的エゴイストは、他者の幸福や利益を優先しているように見えますが、根底には「自分の満足感や利益を得たい」という意識があり、それを自覚している人です。

つまり「Win-Winの関係」を重視する傾向があり、他者の利益のために自分を蔑ろにすることもなければ、自分の利益のために他者を搾取するようなこともしません。

利己でも利他でもなく、両者の特性を内包しつつ、それを自覚しているのが特徴です。

より具体的な特徴は、次の通りです。

  • 他者を助けることで 自己満足や利益を得る
  • 見返りを求めないが、結果的に得をする
  • ボランティアや社会貢献が好きだが、自己実現も意識
  • ギブ&テイクのバランスが上手い
  • 損得勘定はあるが、あからさまにせず、自然な形で親切を行う
  • 精神的な満足感が健康や成功につながる

さらに、愛他主義的エゴイストは、偽善者と異なり「表向きだけ善人ぶっている」わけではありません。心の底から「他者の笑顔」や「他者の幸せ」が好きで、他人が幸せそうにしている姿を見て、自分自身も満たされる感覚を持っています。

つまり、愛他主義的エゴイストを目指すなら、まずは「人間を好きになる」必要があるのです。

利己と利他と愛他的エゴイズム

最後に、利己主義と利他主義、愛他主義的エゴイズムについて簡単にまとめてみましょう。

まず、人間には利己主義者(エゴイスト)と利他主義者(アルトゥルイスト)という異なる性質があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

利己主義者は自分の利益を優先し、時に合理的で強い意志を持つ一方で、孤独に陥りやすい傾向があります。

利他主義者は他者を優先することで人間関係を円滑にしますが、自分を犠牲にしすぎることでストレスを抱えることも。

この二つの極端な性質のバランスを取り、「他者を幸せにすることで自分も幸福になる」 という考え方を持つのが 「愛他主義的エゴイスト」 です。

愛他主義的エゴイストは、利己と利他のバランスを意識的にとりながら行動し、Win-Winの関係を築くことを重視します。その結果、人間関係に恵まれ、ストレスが少なく、精神的にも満たされやすいため、健康寿命が長くなる傾向があるのです。

「他者の幸せを願い、それによって自分も幸福を得る」 という愛他主義的エゴイズムの考え方を取り入れることで、人生はより豊かで充実したものになるでしょう。健康で長く幸せに生きるために、今一度、自分の生き方や人との関わり方を見つめ直してみるのも良いかもしれません。

愛他主義的エゴイズムへの理解を深めるには、「“うつ”になる原因と対策 ~うつの回復に必要なもの~」も役立つかと思います。併せてご覧ください。