2020年頃から「生きづらさ」というキーワードがネット上をはじめ、各種メディアでしばしば用いられるようになりました。
SNSでも「生きづらさ」というキーワードや、それに関連するトピックがトレンド入りするなど、現在も話題になっています。
今回は、「生きづらさ」と「生きやすさ」の違いを考察し、生きづらさを解消するための具体的な方法を提案します。
「生きづらさ」とは

そもそも「生きづらさ」とは、具体的にどういうものを指すのでしょうか。
「生きやすい」か「生きにくい」かの判断は、個々の主観に委ねられるため、「生きづらさ」を明確に定義するのは困難です。しかし、一般的に「どういう状態の人が生きづらさを抱えやすい傾向にあるか」を予想することはできます。
たとえば、以下のような境遇にある人は、生きづらさを抱えやすい傾向にあるとされています。
- 経済的に困窮している人
- 難病などの持病がある人
- 発達障害や身体障害など障害がある人
- 両親の不仲やDVなど家庭環境に問題がある人
- 事件や災害など何らかのトラウマを抱えている人など
親の歪んだ教育によって生じた脅迫性障害や愛着障害などは④に、いじめ被害により不登校になってしまった場合や、性犯罪被害によりトラウマを抱えてしまった場合などは⑤に該当します。
さて、「生きづらさ」と言うとあくまで「個人的な問題」と思われがちですが、実は社会的な問題であり、我々全員が当事者意識をもって対策しなければならない課題でもあります。
なぜなら、生きづらさの大半が社会的要因に起因しており、なおかつ個人での解決が難しいためです。さらには、生きづらさを伴うハンデは、誰の身にも降りかかり得るリスクでもあります。
たとえば、会社の倒産や被災などで急に収入が途絶えてしまったり、減収に伴いローンの返済が滞り、債務者となってしまい、経済的に困窮する可能性は誰にでもあります。交通事故に遭って脳が損傷したり、体が欠損したりして障害を負ったり、家庭不和により一家離散したりする可能性もあります。もちろん、事件に巻き込まれたり被災したりといったリスクも対岸の火事ではありません。
こうした問題を自己責任として切り捨てるということは、個人での解決が難しい数々の課題を放置するということです。さらには、万が一にもこれらのリスクが我が身に降りかかったとしても、救済の手立てがないままの社会状況を許容するということに他なりません。
こうしたリスクを排除するために、社会全体で「生きづらさ」という問題に向き合っていかなければならないのです。
つまり「生きづらさ」とは、いまだ社会的に手つかずのままになっている、未開の領域における重大な課題なのです。
生きづらさに苦しむ人の特徴

SNSで生きづらさを主張するのは、不登校児やその家族、発達障害当事者や近親者、あるいは特定の疾患や難病に悩まされている方、引きこもりの方などに多く見られます。後期高齢者にも、生きづらさを感じている人が相当数いることが予想されます。
しかし、もちろん世の中には、ハンデを持ちながら精力的に生きる人もいれば、疾患や難病を抱えながらも毎日を楽しそうに生きている人もいます。つまり、上記にあげたような特定のハンデや条件が、必ずしも「生きづらさ」の直接的な原因ではないということです。
では、生きづらさの原因はどこにあるのでしょうか?
その答えは「環境」です。
たとえば、ハンデがあったとしても、支えてくれるパートナーや家族、友人などがいれば、ふさぎ込むこともなく元気に生きられる確率が上がります。疾患や難病があっても、いわゆる抗体源をたくさん有していれば、やはり元気に生きられる確率が上がります(「抗体源」とは、元気の源になってくれる存在のことです。詳しくは「抗体源とは? 抗体源を増やして免疫力を高める方法を解説」をご覧ください)。
このように、たとえ同じハンデを負っていても、精力的に生きられる人もいれば、生きづらさを抱える人もいます。
両者の決定的な違いは、そのハンデを補えるだけの支援があるか否か。支えてくれる人や支援制度にアクセスできているか否か。つまり「環境」なのです。
ハンデを補う環境とは
ハンデを負っていたとしても、強力にサポートしてくれるパートナーがいると、とても心強いものです。互助関係の中で愛や絆が生まれれば、人生はいっそう輝くでしょう。
パートナーに限らなくても、親身になって支えてくれる家族や、応援してくれる友人などがいればとても頼もしいですし、「自分は一人じゃない」「助けてくれる人がいる」「だから何とかやっていけるはずだ」という前向きな気持ちになりやすくなります。この「希望」こそ、生きづらさを生むハンデを克服するもっとも強力なパワーです。
もちろん、何が有効な支援になるかは人それぞれでしょう。行政のサポートや公的年金の給付などが支援になる人もいれば、愛するペットの存在に支えられる人もいるはずです。
ハンデを負っていても充実したライフスタイルを実現している人は、このように「頼れる人」がいて、「希望を持てる環境」があります。一方、生きづらさを抱えている人たちは、親など家族から見捨てられたり、あるいは既に縁を切っていたり、支えてくれるパートナーがいなかったり、それどころか人から疎ましく思われて疎外感や孤独感にさいなまれていたりするのが現実です。
つまり、「希望を持てる環境」以前に、「希望を持つ理由やきっかけ」すらないのが実情です。
生きづらさを克服するには

生きづらさを克服する方法はケースバイケースですが、一つだけ確かなのは、心身のコンディションを整えるには環境を整える必要があるということです。
たとえば、生きづらさを抱える人の多くは、「悩みを相談できる相手」や「プライベートな話ができるほど信頼できる相手」がいない、あるいは少ない傾向があります。
そのため、いっそう孤立し、自分の世界に引きこもるという悪循環に陥ってしまうのです。
このような状態になると、自分一人の力で環境を変えるのは容易ではありません。
ですから、協力者や支援者とのつながりが必要なのです。
パートナーや家族、友人など、身近なところに協力者や支援者がいない場合は、行政の窓口に掛け合って然るべき機関のサポートを受けたり、カウンセラーやソーシャルワーカーなどに相談したりする選択を視野に入れるのがいいでしょう。
生きづらさは「環境」から生まれる

免疫力が上がる生き方をテーマとしている本ブログで、今回「生きづらさ」を取り上げた理由は、「生きづらさ」と「免疫力」が密接に関係しているからです。
特に生きづらさを感じ、絶望感を抱えたまま生きている人は、免疫力が低下して健康を損なうリスクが高くなります。これは、「あきらめが生命力を奪う「あきらめ症候群」のリスク」でも紹介した通り、難民の子どもが陥るミステリアスな疾患「あきらめ症候群」が誘発される状況にとてもよく似ています。
生きづらさを感じている状態から抜け出すには、あきらめ症候群に陥っている状態あるいは陥りかけている状態から抜け出すのと似たプロセスが必要だと考えられます。
彼らに必要なのは「希望」であり、その「希望」を与えてくれるのが「協力者」や「支援者」なのです。
希望的信念を獲得するために
自分が心を開いていない相手や、信用していない相手から手を差し伸べてられても、ほとんどの場合はうまくいきません。たとえば、いくら優秀な指導者が不登校児を説得しても、いくら権威のある医師が患者に説明しても、いくら実績のある教育者が生徒を諭しても、対象者が彼らを信用していなかったり不信感を抱いていたりすれば、十分な成果が見込めないのです。
つまり、「心から信頼できる人を見つけること」が最初のミッションになります。
「この人なら信用できる」「この人なら安心できる」と、信じられる相手が見つかると、希望的信念を持ちやすくなるのが人間の心理です。
そして、この「信じる心」があれば、プラセボ効果による恩恵にも期待できます。
原則的に、プラセボは希望を持つ人や希望的信念を抱く人に作用します。たとえば、信頼しているかかりつけ医に診てもらったり、有名な治療薬・治療方法を利用したりすると、たとえそれが偽薬であっても、体は生来の治癒力を発揮して反応することはよく知られています。
医療に限らず、信仰や宗教などにおいても同様です。神や仏を信じることでコンディションが整ったり、お祈りをしたりお経を唱えたりすることで、ストレスホルモンが減少することはよく知られています。音楽イベントでトランス状態に陥って気分がすっきりするのも、似たような原理です。
さらに、もっと身近な例でいえば、恋をするだけでコンディションが良くなるケースが典型的でしょう。特に女性は、ホルモンバランスにコンディションが左右されやすいため顕著です。恋をしたら肌ツヤが良くなったという例をはじめ、アトピーが劇的に改善したケースもあります。
また、医師が患者に対してポジティブな声掛けをするだけで、あるいは救急救命士が傷病者にポジティブな声掛けをするだけで、患者や傷病者生来の治癒力が発現する可能性が高まることもわかっています。
つまり、人間が心身ともに健康的に生きるには、「自分は健康である」というある種の思い込みが必要であり、その思い込みを維持するには、ポジティブな声掛けをしてくれる協力者や支援者が有効だということです。
希望は時に、がんのような重い病を克服したり、心血管疾患などの深刻な病を予防したりする力になります。人とのつながりや絆から生まれる希望や、前向きな気持ちが、健康をいかに大きく左右するかについては、ロゼト効果を例に解説した「“がん”はなぜ治るのか ~がんが治癒した5つの事例~」でも詳しく解説しています。
「生きる才能」は「抗体源を作る才能」
「生きる才能」を定義するとすれば、それは“できるだけ多くの支援にアクセスする能力”であり、さらには「支援にアクセスするための知識」や「それを実行する体力・気力」、そして、実際に支援を獲得するための「コミュニケーション能力」や「プレゼン能力」などに細分化できます。
つまり、「いかに多くの抗体源を獲得できるか」に集約され、抽象的には「希望的信念を持てるような環境を構築できるかどうか」が大きな課題なのです。
生きづらさを感じている人の中には、コミュニケーションが苦手だったり、知識にアクセスしにくい環境だったり、多くの人ができることができない状況だったりする場合が多いはずです。だからこそ、社会はそういう人たちの人権や尊厳を守るために、常にアップデートされていかなければなりません。
これらを踏まえた上で、希望という名の思い込みをうまく利用し、適切な支援にアクセスするとともに心身のコンディションを整える習慣を身につけたいところです。
余談ですが、催眠療法にも治癒能力を高める効果があることがわかっています。偽薬による治療も、希望によって生まれる力も、催眠療法による効果も、すべては「もっと良くなるだろう」という思い込みに起因する人体の機序なのです。
偽薬や催眠療法の力を信じる者は、出血や炎症が治まったり、喘息が和らいだり、片頭痛の痛みさえもコントロールできたりするケースまであります。10年以上も喘息による呼吸困難で苦しむ患者が、わずか30分の催眠療法で、喘息を完治させてしまった事例もあるほどです。
これらのメカニズムは、思い込みによって神経伝達物質の分泌が促進されたり、体の抗体レベルが上昇したりなど、さまざまな生理反応が複雑に絡み合って作用します。
信頼する人からの「あなたは大丈夫」「一緒に頑張ろう」「まだまだできることがある」といったポジティブな声掛けもまた、人体のポジティブな反応を引き出すのに有効なトリガーです。
生きづらさを感じている人は、根性論や精神論で課題を克服しようとするのではなく、まずはこうした人体の仕組みへの理解を深めた上で、自分自身と上手に付き合っていくのがおすすめです。
人体の仕組みへの理解を深めたり、コンディションを整えたりするには、「健康の秘訣は「思い込み」だった⁉ 心が体を生かす人体の神秘」や「人間はリラックスした状態が最強! 病魔にも打ち勝つリラックスのメカニズム」の記事も役に立つかと思います。併せてお読みください。


