人間はリラックスした状態が最強! 病魔にも打ち勝つリラックスのメカニズム

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強敵を眼前に、追いつめられた主人公が悟りの境地に達し、リラックス状態になった途端に相手を圧倒する──。

アクション映画や格闘漫画などで、このようなワンシーンを目にしたことはないでしょうか。

まるでフィクション作品の中の奇跡的なワンシーンのように描かれていますが、近年のさまざまな研究において、実は人間は「リラックスした状態がもっとも強い」ことが明らかになってきました。

今回は、「リラックス」がもたらす健康効果と、そのメカニズムについて解説します。

リラックスがもたらす効果とは

スピーチやプレゼン、あるいは競技などのここ一番で、緊張のあまり失敗してしまったり、不安のあまり体調が悪くなったりした経験がある人は多いのではないでしょうか。

これはまさに冒頭で紹介したエピソードの逆にケースで、「緊張や不安により心身が不安定になってしまった状態」です。つまり、「リラックスしたベストコンディション」とは対象的な状態です。

実は緊張や不安のほか、恐怖や絶望など情緒的苦痛を強く感じている人は、そうでない人に比べて尿内から検出されるストレスホルモン(コルチゾール)値が高く、リンパ組織の機能も抑制され、心身の健康を損ないやすい状態になることがわかっています。

逆に、リラックス状態だと唾液内のバクテリアが減少し、虫歯にかかりにくくなるという調査報告も。

つまり、心身ともに安定したリラックス状態を生むことで、人間はフィジカルもメンタルもベストなコンディションを保ち、真価を発揮しやすくなるということです。

ある科学者は、心理的あるいは身体的脅威が体内の結核菌を呼び起こし、発症リスクを高めることを突き止めました。そして、結核の一番の治療法は患者をストレスから解放し、ゆっくりと休息を取らせることであるとコメントしました。

他の感染症においても、過去に感染した人としなかった人とを比較した研究において、感染しなかった人と同じ環境下にありながら感染した人は、発病前に仕事や結婚、金銭面などで多くの問題や悩みを抱えており、それらの問題に対処する術も持っていなかったことがわかっています。

このようにさまざまな事例を見ると、私たちの健康を司るのは物理的な病理メカニズムというより、免疫システムを司る「気分」や「感情」など「メンタルのコンディション」であることがわかります。

人生というゲームで勝ち続けるには、緊張したりイライラしたりといった不安定な自分をコントロールし、リラックスした状態をいかに作り出し維持できるかが鍵です。

不安定な人間はどうなるのか?

では逆に、メンタルが不安定になりやすい人には、どのような結果が待っているのでしょうか。

たとえば、身内など大切な者を失った人は、リンパ細胞の機能が低下しやすいといわれています。

リンパは免疫システムを司る重要な構成要素ですから、リンパ機能が低下すると感染症にかかりやすくなったり、持病が重症化しやすくなったりします。あるいは体が炎症を起こしやすくなったり、がん細胞が増殖しやすくなったりするリスクもあるといわれています。

また、権力志向の強い人が目標を達成できなかった場合も、免疫機能が低下しやすいことがわかっています。ストレスにより交感神経が過剰に働き、免疫機能を低下させるためです。

カポジ筋腫患者の追跡調査では、態度や気分と免疫機能の間には重大なつながりがあることがわかりました。不安感や絶望感、あるいは「物事を自分でコントロールできる」という心の余裕(コントロール感)の欠如は、白血球を明らかに減少させ、免疫力を低下させることが判明したのです。

本項で紹介した例だけでなく、不安や緊張、恐怖、絶望、あるいは孤立感や憂鬱感などが強ければ強いほど免疫力が低下し、心身の健康リスクが大きくなることが、近年のさまざまな研究により明らかになってきました。

このようなリスクを避けるには、リラックスした状態を意識的に作るスキルを学習する必要があります。

リラックス状態を作る方法

心と体をリラックスさせる方法の一つとして、「安心を与えてくれる存在とのつながりをできるだけ多く確保する」というものがあります。

安心を与えてくれる存在とは、たとえばパートナーや家族、友人、仲間、ペットやインフラ、ソーシャルワーカーや保険、温かいコーヒーなど何でも構いません。とにかくポジティブな感情へと導いてくれる存在と、スムーズにアクセスできる状態を作ることが大切です。

これらの存在は安心を与えて抗体を強め、結果的に免疫力を高めてくれるため「抗体源(こうたいげん)」と呼びます。

抗体源については「抗体源を増やして免疫力を高める方法を解説!人間関係やリラックスが鍵」で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

さて、HIVに関する調査では「現状を楽観的に捉え、病気をコントロールできると考える姿勢が生存者の共通点である──」とする報告があります。一方、生存できなかった人の共通点は絶望的であったり、受動的であったりすることでした。

医師や家族、周りの人たちに助けを求めたり、信頼できる人に悩みを相談したりする態度が安心やコントロール感の獲得につながり、最終的には健康維持や生命の維持につながる可能性があるという好例です。

実際に大切な人を失くしたり、人生がうまくいかなかったりする状況で、安定したメンタルを保つのは至難の業でしょう。人間は喜怒哀楽がある感情的な生き物ですから、時には哀しみに打ちひしがれたり、心が折れそうになったりすることがあります。

しかし、そうした状態になってもふさぎ込まず、つらい時は誰かに話を聞いてもらったり、悩みを打ち明けたりする態度が、最終的には安定的なリラックスした状態を得るのに役立つのです。

人間は決して一人で生きているわけではありませんし、完璧なわけでもありません。

自分自身の弱さや未熟さを受け入れつつ、その上で多くを背負い過ぎないことが、健康的な生き方への第一歩といえるでしょう。

メンタルを上手に管理するためのヒントが知りたい方には、「免疫力を高めるにはメンタル管理が有効!ストレス科学から学ぶ9つのメンタル管理術」の記事もおすすめです。

また、ストレスとの付き合い方に悩んでいる方は、「心のレンズを変えるだけで健康に│ストレスとの正しい向き合い方」も併せてご覧ください。

健康のために始めるリラックス習慣

心身の健康のために、リラックスした状態でいることがいかに大切かがおわかりいただけたと思います。

もちろん、冒頭で述べたような極限状態でリラックスできれば怖いものなしでしょう。しかし、人は誰しも時には不安に駆られますし、緊張で失敗してしまうこともあります。それはそれでいいのです。

大切なのは、失敗してもくよくよせず、すぐにリカバリーすること。そして、日ごろからリラックスできる習慣を持っておくことです。

たとえば朝のコーヒータイムや、仕事終わりの一服タイム、あるいはゆったりとした入浴タイムや、就寝前のストレッチタイムなど、方法は何でも構いません。「これをしている時はゆったりとした気分で過ごそう」と決められるものであれば、キャンプでもサウナでも瞑想でもいいのです。

こうしたリラックス習慣を持っていると、いつでも心身のコンディションをリセットしやすくなります。疲れたときや悩んでいるとき、リラックス習慣を実践することで、リラックスした状態にスイッチしやすくなるためです。

あるいは家族や友人など、すぐにアクセスできる抗体源が複数あるとなお良いでしょう。

いきなり高いハードルを越えようと無理をしては本末転倒。まずはできることから少しずつ始めてみましょう。その小さな一歩が、やがて大きな成果をもたらしてくれるはずです。