現代科学ではまだ解明されていないものの、幸福の実感が確かにある「愛」。
愛という感情は、とても謎めいていて神秘的ですが、私たちにとってとても身近な感情であり、幸福な人生を歩む上で決して欠かせないものでもあります。
実は、人を愛することで心身が健康になる──と言ったら、皆さんは驚くでしょうか?
今回は、愛することで心身が健康になるメカニズムについて解説します。
愛が体に与える影響

2016年にパナソニックが実施した調査では、愛に関するとても面白い結果が得られています。この調査では、家族から愛のこもった言葉を伝えられたとき、人の体温がどのように反応するのかを実験しました。愛を伝える方が仕掛け人となり、被験者である家族に対して愛や感謝の言葉を綴った手紙を読み、被験者の体の表面温度を高性能サーモパイル赤外線センサーで測定するという実験です。
結果、被験者の体温は平均0.8℃上昇し、中には1.2℃も上昇したケースも。
広島国際大学の高尾文子教授は、この実験結果に対して「愛の言葉で副交感神経が活性化し、体温が上昇することを明らかにした意義のある実験。人が愛情を感じ脳と体がリラックスすることで、より健康になっていくことを例示する興味深い取り組み」と述べました。
また、日米の大学で行われているオキシトシン研究では、愛情ホルモンであるオキシトシンが、うつ病や自閉症の治療薬として研究されており、その成果への期待が高まっています。
愛が幸福ホルモンの分泌を促すのは明らかで、幸福ホルモンがストレスホルモンを抑制したり、体の抗体レベルを高めて免疫機能を整えることも明らかになっているので、愛が心身の健康に寄与するのは疑いようのない事実です。
このように、愛情や笑い、美などのポジティブなイメージが引き起こす生理的反応について理解を深めれば、人体の自然治癒能力が目覚め、免疫機能が整いやすくなるでしょう。
逆に言えば、頻繁に病気にかかる人は、愛や感謝など自分の心から生まれるポジティブな反応を十分に活用できていない可能性があるのです。
愛のメカニズム

愛を感じると、オキシトシンなどの愛情ホルモンが分泌されるほか、脳内や体内でさまざまな反応が起こっています。一口に「愛」と言っても、恋愛・親子愛・友情・自己愛などさまざまな形がありますが、共通して以下のような反応が体の中で起こります。
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STEP1感覚入力
好きな相手を見たり、声を聞いたり、触れたりすることで感覚情報が入力され、脳の視覚野や聴覚野など感覚野を通って、大脳辺縁系(特に扁桃体や海馬)へと送られる。
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STEP2感情評価
「好き」「安心する」「信頼できそう」といった評価が無意識にはたらき、扁桃体(感情のセンサー)が「快 or 不快」「安心 or 危険」などを判別。脳内でオキシトシンやドーパミン分泌の準備が始まる。
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STEP3ホルモン放出
視床下部でオキシトシンが生成され、下垂体後葉から分泌。脳の報酬系(側坐核など)の活性化に伴いドーパミンが分泌され、信頼や落ち着きが強まるとセロトニンも分泌される。
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STEP4自律神経系の反応
ホルモンに反応し、副交感神経が優位になりリラックス状態へ。心拍が安定し血圧が下がる。さらに、笑顔・涙・ハグ・触れ合いなどで、オキシトシンが追加分泌される。
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STEP5記憶と学習
幸せな愛の体験は海馬で記憶化され、「この人=安心・幸福」としてインプットされる。この記憶により、次回以降の接触でさらにホルモンを分泌しやすくなる。
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STEP6行動の変化
ホルモンの作用により、好きな相手に優しくなったりスキンシップが増えたり共感的になったりなど行動が変化する。
上記のステップをループすることでホルモン分泌が強化され、幸せを感じやすい体質が作られていきます。このように、愛情が人体に与える影響や健康効果は科学的にも明らかですが、これらついて一般に語られることはほとんどありません。
健康で幸せな人生を歩むために、どんなことを考え、どんな感情を持つかについて、私たちはもっと注意深くなる必要があります。
愛情深い人ほど健康になりやすい?
どんな国籍であろうと、どんな年齢であろうと、大半の人間は病気のことばかり考えていると本当に病気になってしまいます。たとえば、体に悪い成分について知識があり過ぎると、かえって体を害してしまう確率が高まります。体を害する無数の方法について考えれば考えるほど、身体症状を起こしやすくなるのです。
これは、いわゆる「ノセボ効果」と呼ばれる心理効果で、物事に対する否定的な信念によって引き起こされるマイナス効果です。
逆に、希望や期待など肯定的思考から生まれるプラスの効果を「プラセボ効果」といいます。
プラセボとノセボについては「健康の秘訣は「思い込み」だった⁉ 心が体を生かす人体の神秘」にて詳しく解説しています。

手術前に自分の死を確信している患者は、多くの場合実際に亡くなるといいます。同様に、「自分は心臓病にかかりやすい」と考えている人は、何の根拠もないのに普通の人より4倍も心臓病になりやすいこともわかっています。
健康状態を左右する要素としては、食事内容(栄養バランス)や住環境などがあげられますが、実は「思考」や「感情」もおおいに関与していることを忘れてはいけません。こうした「実態のない要素」が、DNAの発言の仕方を決める重要な要素なのです。
愛を獲得するには

心身の健康の大きな支えとなる「愛」を獲得するために、もっとも理想的なのが「パートナーを見つけること」です。あるいはコミュニティに属し、家族のような絆と信頼関係を結べる人たちと仲良くするのもいいでしょう。ペットを飼うのも、心身の大きな支えとなる場合があります。
しかし、もっと手軽に愛のプラス効果を得る方法がいくつかあります。
1.愛や感謝の言葉を口にする
はじめに紹介したパナソニックの実験の通り、人間は愛や感謝の言葉を受け取るだけで幸福ホルモンが分泌されます。人間心理には「返報性の原理」があり、してもらったことにはお返ししたくなるものです。愛や感謝の言葉をたくさん口にすれば、それだけたくさんの愛や感謝を返してもらえます。
特に日本人は、他人への好意を口にするのを苦手とする人が多い国民性です。パートナーにさえ「好きだよ」「愛してる」を言えない人が多いですし、「ありがとう」を言いたがらない人さえいます。パナソニックの同調査によると、普段から家族に対して「愛している」と言葉にして伝えていない人は、全体の84.7%にものぼりました。これは、自他へのプラス効果をみすみす手放す非常にもったいない機会損失です。
愛や感謝の言葉を口にする習慣を身につけましょう。
2.人に親切にする
人に親切にするのも効果的です。親切にするとオキシトシンやセロトニン、エンドルフィンなどの幸福ホルモンが分泌され、脳内は愛を感じているときと同じ状態になります。
横断歩道を渡っているお年寄りをサポートしたり、落とし物を拾ってあげたりなどの小さな親切でも、十分にプラス効果があります。「情けは人のためならず」という言葉の通り、親切は巡り巡って自分自身に回ってくるものです。
3.笑う
実は、笑うこともプラス効果を生むのにとても有効です。笑うことでドーパミンやエンドルフィンが分泌されるだけでなく、NK(ナチュラルキラー)細胞が活性化し、免疫力も整いやすくなります。お笑い番組やコメディ映画などを観たり、落語や漫才を観たりして笑うのもいいですし、仲の良い友達やパートナーと会話を楽しむのもいいですが、実は笑顔を心掛けたり、鏡を見ながら笑顔を作ったりするだけでもプラス効果に期待できます。

4.自然と触れ合う
キャンプや焚き火、釣りやハイキングなどのアウトドアで自然と触れ合う行為も、心身の健康に寄与します。もしかすると近年のキャンプブームは、疲れている人や消耗している現代人の多さを象徴しているのかもしれません。
また、自然公園などでジョギングやウォーキング、サイクリング、エアロビクスなどを楽しむグリーン・エクササイズは、5分程度の短時間でも、高いレベルでメンタルヘルスを向上させることがわかっています。
5.音楽を聴く・歌う・演奏する
音楽は脳の報酬系を刺激し、ドーパミンとエンドルフィンの分泌を促します。音楽イベントに参加して思いきり楽しむのもいいですし、カラオケボックスで熱唱するのも効果的です。ギターなどの楽器を練習し、弾き語りができるようなるのも楽しいですが、実は鼻歌を歌うだけでもプラス効果に期待できます。
愛はもっとも身近でもっとも強力な健康法
愛は単なる感情ではなく、私たちの脳と体を活性化させ、心身の健康を支える「目に見えない薬」です。オキシトシンやドーパミン、セロトニンといった幸福ホルモンの分泌を促し、自律神経や免疫系にまで良い影響を与えてくれる愛の力は、科学的にも実証されつつあります。
しかもその効果は、特別な相手がいなくても得られます。
感謝の言葉を口にしたり、人に親切にしたり、笑ったり自然に触れたり音楽を楽しんだり──こうした日常の中の小さな行動が、心身ともに健康な体質を作るのに役立ちます。
健康や幸福を求めて医療やサプリを頼るのもいいですが、まずは「愛を与えること」「愛を感じること」から始めてみてください。それこそが、もっとも自然で持続可能な“幸せの処方箋”です。
【参考サイト】
・Panasonic Group「視聴数630万回突破!『LOVE THERMO #愛してるで暖めよう』動画で実証!愛の言葉で人の体は暖まる #バレンタイン」
・日本プロジェクトマネジメント協会オンラインジャーナル「グリーン・エクササイズ」


