恥を捨てた瞬間に始まる“免疫力が上がる生き方”

すべて

恥は心の毒、勇気は人生の薬──

「自分は弱いけれど、かけがえのない存在だ」

そう胸を張って言える人は、どれくらいいるでしょうか。

私たちは日々、「こうあるべきだ」「もっと努力しなければ」という社会の期待や評価に押し潰されそうになりながら、できるだけ完璧な自分を演じています。しかし、その背景には「恥」の感情が潜んでいます。

ヒューストン大学ソーシャルワーク大学院の研究者であるブレネー・ブラウン博士は、「恥こそが、真の人間関係の構築を妨げる毒」だと断言します。恥を手放し、自分の本心を認め、心からのつながりを求めること――それが「心を込めて生きる」ことなのです。

そして、こうした生き方は単なる精神論にとどまりません。科学的にも「本物の自分でいること」は、私たちの健康と寿命を大きく左右することが証明されています。

「心を込めて生きる(Wholehearted Living)」という概念は、ブレネー・ブラウン博士が長年にわたり研究してきたテーマです。

彼女の研究は、「恥(shame)」「脆弱性(vulnerability)」「共感(empathy)」「勇気(courage)」といった、人間の感情の深層に迫るもので、心理学、社会学、教育、リーダーシップの分野に大きな影響を与えています。

特に注目されたのが、彼女のTEDトーク「The Power of Vulnerability(脆弱性の力)」です。この講演は全世界で6000万回以上視聴されており、彼女の言葉に多くの人が心を揺さぶられました。
そこで彼女はこう語っています。

「脆弱性とは、恐れや不確かさ、感情的な露出に身をさらすこと。でもそれこそが、創造性、愛、喜び、そして“つながり”の源なのです」

ブラウン博士は、人と深くつながるには、自分の脆さをさらけ出す勇気が必要だと強調しています。そして、その勇気を持てない背景には、「自分は十分じゃない」という自己価値の否定、つまり「恥」が存在しているのです。

恥を抱えたままでは、人に助けを求められず、本当の自分を見せられず、やがて孤立してしまいます。それは、心の健康だけでなく、身体の健康にも重大な影響を与えると彼女は警鐘を鳴らします。

逆に、自分を肯定し、脆さを受け入れ、共感をもって他者とつながることができる人は、「心を込めて生きる人(wholehearted people)」と呼ばれ、幸福度も健康度も高いことが研究から明らかになっています。

和の心を大切にする日本人は特に、「人に迷惑をかけてはいけない」「ちゃんとしなきゃいけない」という同調圧力の影響で、自己肯定感が低い人が多いと言います。

謙虚さや協調性、世界に類を見ない規律と秩序は日本人の素晴らしさですが、一方で、多様性を受け入れ難い体質や国民性が弱点でもあります。

健康に生きるためには、私自身のそんな“弱さ”ともしっかり向き合う必要があるのです。

恥を手放すと、心も体も癒される

他人の評価に振り回され、完璧を目指す生き方は、ストレスの温床です。

仕事の慢性的あるいは長期的なストレスも、心臓に負担をかけ、血管を傷つけ、消化管を刺激し、副腎を疲れさせ、やがては免疫系の機能を低下させます。

ストレスであらゆる臓器に負担をかけ続けることは、いわば「命を削っている状態」であり、文字通り寿命を縮める行為です。

目の前の仕事に、果たして「自分の命を明け渡す」ほどの価値はあるでしょうか?

ストレスはまた、食欲不振を招いたり、体重減少の原因となるACTHやメラニン細胞刺激(MSH)を脳から放出します。こうしたストレス反応は、胃が収縮する能力を弱め、結腸の筋肉収縮を刺激し、副腎皮質刺激ホルモンの分泌過多により下痢などの症状を引き起こす場合があります。

はじめのうちは体が何とか着いてきますが、時間と共に心身は消耗し、血圧が不安定な状態が続くにつれて、血管壁が硬化してもろくなります。さらに、体内で脂肪酸やグルコースが過剰に作られると、血管内にプラークがたまり、心臓病の原因になります。慢性的な筋肉の緊張や炎症も、痛みや筋骨格障害の原因となります。

このように、ストレスは心臓や血管、消化器官、副腎、免疫系、膵臓など、身体のあらゆる器官に悪影響を与えます。

ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰分泌は免疫系を抑制し、感染症やがんのリスクを高めます。慢性的なストレスによって胃腸障害や高血圧、筋肉の炎症、痛みまで引き起こされるのです。

しかし、自分を慈しみ、恥の意識を手放し、リラックスして生きると、心身は劇的に癒されます。本物の自分でいることは、まさに「体にとっての薬」なのです。

誰をはばかることなく、ありのままの自分でいること。

恐れに打ち勝ち、自分の心を正直に伝えられるようになると、不思議なことに、私たちの身体は本来持っている「自然治癒力」を最大限に発揮し始めます。リラクゼーション反応が起き、心拍数が下がり、呼吸が深くなり、免疫系が強化されるのです。

逆に、恐れや不安、羞恥、抑うつといった感情が続けば、病気になりやすくなります。

「豊かさ」ではなく「意味ある生き方」が健康を創る

統計によれば、豊かな人は貧しい人よりも4〜5年長生きし、病気のリスクも低くなることがわかっています。しかし、「豊かさ」は単なる経済的な問題だけではありません。

豊かな人々は、自己肯定感が高く、社会的な支援を得やすく、自己実現を果たしやすい環境にいるため、ストレスに強く健康でいられるのです。

同時に、「個人として意義を感じられる活動」をしている人の方が、幸福であり健康であることもわかっています。つまり、自分の価値観に合った目標に取り組むことは、免疫系を強くし、循環器系を落ち着かせ、寿命までも伸ばすのです。

では、どんな生き方が私たちの健康と幸福を支えてくれるのでしょうか?

以下の5つの条件が、科学的にも心身の健康に強く影響していることがわかっています。

  • 明確な目標を持つこと
  • 支え合える仲間がいるコミュニティを持つこと
  • 自分の価値観に合った仕事をすること
  • 人の役に立つ活動をしている実感を持つこと
  • 自分の使命と才能を生かせる環境に身を置くこと

このような環境で人は、自分が「誰かのために生きている」と感じることができ、それが人生に意義と自負心をもたらします。この状態がストレス反応を鎮め、身体の健康を最適に保つ秘訣です。

創造性は最大のセルフケア

創造的な活動は、ただの娯楽ではありません。

音楽を聴く、料理をする、文章を書く、ダンスをするなど、創造性を発揮する時間は、体と心にリラクゼーション反応を引き起こします。エンドルフィンが分泌され、不安や抑うつが和らぎ、血圧が下がり、呼吸がゆっくりになり、免疫機能が強化されるのです。

つまり、あなたが夢中になれるもの、それは最高のストレスケアなのです。

創造性を発揮できる趣味や活動は、楽観性を育てるのにも役立ちます。

楽観主義者は、悪い出来事に対しても「一時的なこと」「自分の責任ではない」と考える傾向があります。

一方、悲観主義者は「いつもこうだ」「全部がダメだ」「自分のせいだ」と考え、絶望感に陥りやすい傾向があります。

実際、悲観主義はうつや不安、心臓病、がんのリスクを高める要因であり、楽観主義はそれらのリスクを軽減することが、さまざまな研究から明らかになっています。

何よりも、「人生を自分でコントロールできる」という感覚が、病気に負けない免疫力を育てる鍵です。

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快活さは寿命を10年延ばす

感情と健康の関係を象徴する興味深い研究があります。

ある修道女の研究では、「非常に快活な人」は85歳時点で90%が生存していたのに対し、「快活でない人」はわずか34%。94歳まで生きた割合は、前者が54%、後者が11%と大きく差が出ました。

また、幸福な人は不幸な人に比べて7.5~10年も長生きするという研究もあります。

現代医学では、感情や精神の健康は後回しにされ、食生活、運動、禁煙、体重管理など肉体的な健康ばかり注目されがちです。

米国では毎年、2100万人がうつ病と診断され、年間3万人の自殺者がいます。 米国人の21%が一生の内にうつ病になり、28%が不安障害になり、5人に1人が抗うつ剤を飲むという統計もあります。

抑うつはがんのリスクを高め、心臓病の危険因子になり、多種多様な陣痛障害に関係するとされています。たとえば、不安はがんのリスクや脳卒中のリスクを高めるといわれているように──です。

人生に満足し、喜びや幸福、希望を持ち、前向きなエネルギーを生む心理状態は、楽観的に人生を楽しむ余裕や、ユーモアを生みます。こうした状態が人の死亡率を下げ、仮に病気になったとしても生存率を高めます。

実際、50歳までにうつ病と診断された人の70%以上が、63歳までに死亡もしくは慢性病にかかったというデータがあります。しかし、人生に非常に満足している人は、不幸と感じている人に比べて、深刻な病気にかかったり、死んだりする割合は10%程度でした。

悪い出来事があった時、悲観主義者は「いつも悪いことばかり起こる……」と、不運を永続的なものだと捉えたり、「これで何もかもがダメになった……」と、不運を必要以上に広範囲に解釈したりする傾向があります。

また、「すべて自分のせいだ……」と、不運を個人的な問題と受け止め、絶望的な気分に陥る傾向があることがわかっています。

誰にでも起こり得る悪い出来事に、永続的かつ広範囲で、個人的に原因を紐づけることは、慢性的な“不幸癖”をつけてしまい、やがてその人を病魔へと導きます。

一方、楽観主義者は、不運を「自分にはどうしようもなかったこと」と受け止める反面、幸運に対しては「永続的かつ広範囲で、自分だからこそ手に入れられたもの」と考える傾向があります。

「快活に生きること」は、単なる性格ではなく、健康や健康寿命を明らかに左右するライフスタイルなのです。

真の健康は、自分を生きることから始まる

健康を求めて、私たちは食事や運動、睡眠などに注意を払います。
けれども、本当の健康とは「どう生きるか」に強く左右されるのです。

  • 恥を手放し、本物の自分として生きること

  • 意味ある目標を持ち、仲間と支え合いながら働くこと

  • 自分の価値観に沿った人生を創造的に築くこと

  • 楽観的な態度を育み、快活に日々を送ること

これらすべてが、ストレスを抑え、免疫系を活性化し、寿命を延ばす要因になります。ブレネー・ブラウン博士が語る「心を込めて生きる」生き方こそ、私たちの心と体を真に健やかにする道です。

あなたが、あなたらしく生きること。

それが、最大のセルフケアであり、最高の処方箋なのです。