私たちが日々感じる「幸福感」には、実は単なる気分の良さだけには留まらない偉大な健康効果があります。
世界的な研究や調査においても、幸福な人はそうでない人に比べて免疫力が高く、病気になりにくく、さらには寿命まで長いことが明らかです。
しかし、それはなぜなのでしょうか?
「幸福」や「気分の良さ」は、実際のところ健康にどこまで影響するのでしょう?
今回は、脳内物質や神経系の働きによる「幸福感」が、私たちの免疫力や健康にどのような影響を与えるのかについて掘り下げていきます。
日常生活で実践できる幸福の習慣もご紹介するので、「毎日がしんどい」「何となく人生に満足できない」というモヤモヤを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
ドーパミンと目標達成の喜び

私たちが目標に向かって努力し、それを達成したときに感じる「達成感」や「喜び」。これらを感じた時、脳内ではドーパミンという神経伝達物質が大量に分泌されています。
ドーパミンは脳の報酬系に関与する物質で、やる気や集中力、快感を生み出すだけでなく、身体の健康にも深く関わっています。
たとえば、ドーパミンには虚血(血流が止まった状態)による臓器のダメージを防ぐ作用があり、心臓や脳の保護に関わっています。つまり、ポジティブな目標に向かって行動し、小さな達成を重ねることは、心だけでなく体(心臓や脳、血管、その他の臓器)を守ることにもつながるのです。
より簡潔に表現するなら、心身のダメージを回復し、治癒力や免疫力を高めるには、「気分の良い体験」や「幸せを感じる出来事」が非常に効果的である──ということです。
オキシトシンがもたらす「癒し」の作用

ドーパミンと併せてもう一つ注目すべき脳内物質が「オキシトシン」です。
「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれいるオキシトシンは、視床下部で作られ脳下垂体から分泌されます。人と人との触れ合いや信頼関係の構築、スキンシップ、親切な行動などによって分泌が促されるこの物質は、心身のコンディションを大きく左右するほど重要な役割を果たしています。
たとえば、オキシトシンによってコントロールされるサイトカインというシグナル物質には、炎症性物質の分泌を抑える作用があります。
つまり、オキシトシンが分泌されると、身体の炎症が抑えられ、免疫系の過剰反応を防ぎ、自己治癒力が高まるのです。
これはストレスによる慢性的な炎症を抱える現代人にとって、極めて重要な役割を果たす物質で、慢性的な炎症のほかうつ病や生活習慣病などの予防にも欠かせません。
幸福な人はなぜ健康なのか?

人間の感情や心身のコンディションは、ホルモン物質に依存していると言っても過言ではありません。
ドーパミンやオキシトシンをはじめ、ホルモン物質にはさまざまな種類があります。
もちろん幸福感や充実感を生み出すポジティブなホルモン物質ばかりでなく、中には身体の炎症を促進したり、免疫力を低下させたりするホルモン物質もあります。
たとえばストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」は、過剰に分泌されると免疫力を低下させ、病気のリスクを高めます。ところが、幸福感が高い人々はこのコルチゾールの分泌が少なく、結果的にストレス反応も少ないことがさまざまな研究から明らかになっています。
幸福な人は、恐れや怒りといったネガティブな感情に振り回されにくく、物事に対する解釈も前向きです。そのため、長期にわたってストレス反応が抑えられ、免疫力が維持されやすくなるのです。実際、楽観的な人は一生を通じて免疫系が強く保たれるという研究もあります。
この「ストレスの感じにくさ」と「免疫力の高さ」が、幸福な人とそうでない人の寿命の差を生み出しているのは想像に難くありません。
さて、私たちの「健康」を大きく左右するのは、外的な環境ではなく、内的な「解釈の仕方」や「思い込み」であると、心理学の世界的権威であるマーティン・セリグマンは説いています。
たとえば困難な状況に直面したとき、自分がどんなふうに心の中で語りかけるか──それが、ストレス反応を強めるか、癒しの方向に導くかを決めるのです。
悲観的な人は、「またダメだ」「どうせ無理だ」といった思い込みに支配され、否定的な感情に基づいた行動をとりがちです。こうしたネガティブな思考は、長期的に見ると心身の健康やコンディションに悪影響を与えます。
そこで重要なのが、「前向きな思考」です。
セリグマンは「悩みごとを前向きな解釈で締めくくる習慣」を勧めています。頭の中で自分自身と対話する際には、否定的な感情で自分自身に愚痴や弱音を植え付けるのではなく、希望や成長、学びを見出して対話を終えることが大切です。
参考サイト:日本ポジティブサイコロジー医学会
瞑想とリラクゼーションがもたらす回復力

自分との前向きな対話を育てるために有効なのが「瞑想」です。
瞑想のポイントは、静かで心が落ち着く場所を見つけ、リラックスできる姿勢をとること。そして、自分の呼吸に意識を集中させながら、愛や感謝、平穏な人生をイメージすることです。
お気に入りの香りを焚いたり、キャンドルを灯したり、神聖な記念品をそばに置いたりするのも効果的です。
音楽を聴きながら、深くゆったりと呼吸し、体の緊張を呼吸によって緩めていくことで、副交感神経が優位になり心身が癒されていきます。
実際、リラクゼーション反応が引き起こされると、人間の体は自己修復モードに切り替わります。副交感神経は、交感神経と違い「生きるために絶対に必要なスイッチ」です。このスイッチが入って初めて、私たちは治癒し、再生することができるのです。
リラクゼーション反応を促す方法は、以下の通り瞑想以外にもたくさんあります。
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ペットと遊ぶ
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祈りを捧げる
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昼寝をする
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ヨガやマッサージを受ける
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歌う、踊る、楽器を演奏する
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おいしい料理をつくる
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自然の中を散歩する
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風呂でゆったりする
これらはすべて「魂に栄養を与える行動」です。そしてこれらは、喜びや愛を呼び起こし、ドーパミン・エンドルフィン・オキシトシンなどの幸福物質を分泌させ、心身を健康に導いてくれます。
また、「人に感謝する」「人に親切にする」といった行動も、リラクゼーション反応につながる典型的な行動です。
とりわけ「感謝」には、人を楽観的にし、肯定的な思考を育て、免疫力を高める働きがあります。逆に、感謝のない人は、いつも足りないものばかりに目を向け、ストレス反応を高めてしまいがちです。
さらに、人に親切にすること(奉仕の行動)は、相手を癒すだけでなく、自分自身の心と体と魂も癒してくれます。親切な行動はオキシトシンの分泌を促し、私たちの中にポジティブな感情と健康な反応をもたらすのです。
自分との対話こそ最大の予防薬
人生を健康に導くためには、単に病気を治すのではなく、「病気にかかりやすくしている根本原因」を見つめる態度が必要です。日常にもやもやしていたり、人生に不満を感じていたりするのなら、まずは自分の否定的な信念や孤独感、悲観的な思考が、心身に悪影響を与えている可能性を見直しましょう。
自分自身に心を開き、思いやりを持ち、直観を信じながら、自分の本当のニーズや問題の根っこにアクセスすること。その上で、生き方を変える勇気を持つことが、最大の治療であり予防につながります。
そしてそのために、色々な経験をしましょう。たくさんの喜びを味わい、愛し、許し、信じ、夢を追い、思い切って自分らしく生きましょう。
それが何よりの予防薬であり、幸福な人生へと舵を取る道標です。


