“笑い”が免疫力を高める! 笑いがもたらす健康効果

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「笑うと健康になる」と言ったら、どれだけの人が「その通り」と納得するでしょうか?大半の人は「まさか!」「笑うだけで健康になれるなら苦労しないよ」「科学的根拠はないんだろう?」と一蹴するのではないでしょうか?

免疫学や心理学、公衆衛生学への関心が高い方なら、笑いの健康効果をご存知かもしれません。しかし、一般的にはまだあまり周知されていない領域のようです。

実は「笑い」には、すばらしい健康効果があることがわかっています。

今回は「笑い」がもたらす健康効果について詳しく解説します。

笑いの健康効果を示すデータ

はじめに、「笑い」の健康効果を示す客観的なデータをいくつかご紹介します。

米国の健康心理学のエキスパートであるKathleen M. Dillon博士が、筆頭著者として1985年に発表した論文「Positive emotional states and enhancement of the immune system」では、笑いと免疫に関するユニークな調査結果が報告されています。

当該調査では、平均年齢22.9歳の10人の男女を対象に、コメディ映像を見せたときと、そうでないときの唾液中のIgA濃度を比較しました。

IgAとは免疫グロブリンA(Immunoglobulin A)の略で、体内の血液や組織液中に存在する抗体の一種です。

調査では、コメディ映像を見た後は、そうでないときと比較し、IgA濃度が有意に上昇しました。つまり、「笑いは免疫力を高める」ことが明らかにされたのです。

また、「東日本大震災後の笑いと生活習慣病との関連:福島県民健康調査」では、笑いの頻度と生活習慣病との関連を調査した結果、毎日笑っている人は、笑わない人と比較して高血圧や糖尿病、心臓病など生活習慣病の割合が低く、この傾向は特に男性に顕著ということが明らかになりました。

笑いが健康に寄与する事例は、実はもっと以前から知られています。1995年3月には、日本医科大学リウマチ科の吉野槙一教授が、中度から重度のリウマチ患者26人(平均年齢57.7歳)を対象に、寄席を観て笑った後の血液データを観察する調査が実施されました。

この結果、落語を聞いた26人中22人に、炎症の程度を示す生理活性物質「インターロイキン6(IL-6)」の顕著な減少が認められたのです。中には、正常の10倍もあった値が正常値にまで改善した例も確認されるなど、笑いが病状改善に寄与するのが明らかな結果となりました。

この調査では他にも、通常は大量のステロイドを使用しない限りは見られない顕著な改善が見られたり、鎮痛剤を使わなければ治まらなかった痛みが消えたりなど、驚くような結果が得られました。これらの「笑いの効果」は話題を呼び、米国のリウマチ専門雑誌「Journal of Rheumatology」23巻4号(1996年)にも掲載されたほどです。

ちなみに、リウマチの患者は「病人の中でもっとも真面目な人たち」と言われているそうで、逆説的には「笑わない人がリウマチになりやすい」と言われることもあるのだとか。

笑いとリウマチの因果関係は不明ですが、笑いが免疫系の機能を高めるのは間違いないようです。

笑いが免疫力を高める仕組み

なぜ「笑う」と、免疫力が高まるのでしょうか?

実は「笑い」と「免疫」には、「NK(ナチュラルキラー)細胞」が密接に関わっています。

NK(ナチュラルキラー細胞)とは?

NK細胞とは、簡単に言うと「ウイルスやがん細胞を見つけて即座に攻撃する免疫の要」で、全身のリンパ球のおよそ5~15%を占めています。

ちなみに、免疫の司令官であり攻撃部隊でもあるT細胞は、全体の60~70%程度、抗体を生成して病原体を無力化するB細胞は全体の10~20%程度を占めています。

NK細胞が特殊なのは、これらの細胞と異なり自由に動き回り、異物を即座に攻撃する点です。

つまり、NK細胞が活性化すればするほど、伝染病にかかりにくくなり、がんの発症や転移も起こりにくくなるということ。

NK細胞は、がん細胞を一方的に攻撃し排除します。

NK細胞はがん細胞の天敵なのです。

笑いとNK細胞の関係

笑うとなぜ免疫力が高まるのか。そのメカニズムはこうです。

まず、笑うことにより神経やホルモンの調整を担当している間脳(かんのう)に興奮が伝わります。すると、エンドルフィンなどの幸福ホルモンをはじめとする神経伝達物質が生産され、血液やリンパ液とともに体中に運ばれ、全身のNK細胞の表面に付着して活性化を促します。

つまり、笑いによって生まれる神経ペプチドこそ、NK細胞の餌のようなものなのです。

NK細胞の餌を生むのは「笑い」だけではありません。適度な運動や良質な睡眠、バランスの良い食事や入浴、自然との触れ合い、ポジティブな人間関係など、心地良さや幸福感が得られるような活動は、NK細胞を活性化させることがわかっています。

笑いの具体的な効果

笑いはウイルスやがん細胞を駆除するだけでなく、他にもさまざまな効果に期待できます。

たとえば、笑いは自律神経を整えたり、脳への血流を促して脳の活動を促進したりする効果もあります。また、笑うことで痛みを緩和したり幸福感をもたらしたりする幸福ホルモンの一種であるエンドルフィンが分泌されるため、痛みを軽減したりストレスホルモンを減少させたりする効果もあります。

その他、筋肉の弛緩によるリラックス効果や緊張の緩和、血流を改善し血圧を下げる効果などもあるといわれているほか、認知機能の改善により記憶力や集中力が高まる効果もあるといわれています。
不安やうつ症状の緩和にも、定期的な笑いが効果的とされています。

また、笑うだけでなく、微笑んだり幸せそうな表情をしたりするだけでも心身のコンディションに良い影響があります。不安にさいなまれているときでさえ、笑顔を作るだけで気分が良くなるものです。

気分が良くなるということはつまり、脳内で幸福ホルモンが分泌されやすい状態になっているということ。笑顔を作るだけでコンディションが良くなったりパフォーマンスが高まったりするなら、どんなときでもまずは笑顔を心掛けたいものです。

「微笑む」「笑顔を心掛ける」「笑う」といったことを意識して、自ら「気分を良くしよう」と努めること自体が、心身の健康を促進します。

これだけでなく、人間の生理現象は意外と「ちょっとした動作」や「ちょっとした態度」に影響を受けるものです。たとえば、ゆっくり優しく話すだけで心拍数が下がりますし、冷笑的な態度や敵対的な感情を持つよりも、熱意を持ったり友好的な態度を心掛けた方が心血管疾患のリスクを下げやすくなります。

病やケガで伏せっていても、回復することだけを考えてリハビリに努めたり、治療だけに集中したり、休暇に専念したりすると、苦痛を和らげやすくなるだけでなく早期回復を促進しやすくなることも、さまざまな研究からわかっています。

「笑い」は最強の健康法

「笑うと健康になる」という話は、一見すると迷信のように思えるかもしれません。しかし、科学的な研究が示すデータによって、笑いが免疫力を高め、病気のリスクを下げることが明らかになっています。

  •  笑うことで免疫細胞(特にNK細胞)が活性化し、ウイルスやがん細胞の撃退につながる。
  •  リウマチや生活習慣病のリスクを下げる効果がある。
  •  ストレスホルモンを減らし、自律神経を整え、脳の働きを活性化する。
  •  たとえ作り笑いでも、ポジティブな影響を脳と体に与える。

つまり、笑いは単なる感情の表れではなく、健康を支える重要な要素のひとつ なのです。

「最近、あまり笑っていないな……」と思ったら、コメディ映画を観たり、友人と楽しい会話をしたり、鏡の前で笑顔を作るだけでも効果的です。どんなに忙しくても、「笑い」を意識して取り入れることが、より健康で幸せな人生を送る秘訣 かもしれません。

【出典】
・Positive emotional states and enhancement of the immune system
・Eguchi E, Ohira T, et al. Int J Environ Res Public Health, 2021, 18(23)

【参考サイト】
日本免疫学会「NK細胞とは?」
サワイ健康推進課「“笑い”がもたらす健康効果」