「病は気から」という言葉は昔から知られていますが、果たしてそれは単なる迷信なのでしょうか?
実は近年、科学の分野でも心が体に及ぼす影響が明らかになりつつあります。信じる力、つまり「プラセボ効果」によって痛みが和らいだり、症状が改善したりする現象が数多く報告されているのです。
皆さんも、今まで元気にピンピンしていたのに、体温を測って発熱していることがわかった途端、何となく体調が悪いような気がしてきた経験はありませんか?あるいは、おいしく食事を摂っていたら、食材の賞味期限が切れていることが発覚し、途端に食欲を失った経験はありませんか?
こうした反応もプラセボ効果の一種(正確には「ノセボ効果」といいます)です。
今回は、「心が体を癒す力」の科学的な根拠をもとに、私たちの中に眠る自己治癒力をどう高められるのかを探ります。
心と体はつながっている

ポジティブな言葉には、心を元気にする力があります。これは自己暗示の一種で、専門的には「アファメーション」といい、メンタルを上手に管理するテクニックの一つです。
しかし、機械的にポジティブな言葉を口にするだけでは十分な効果に期待できません。重要なのは、「心と体がつながっている」という事実を深く理解し、信じること。その信念こそが、心の力を引き出すスイッチとなります。
たとえば、自分の体をコントロールする術を身につけることで自己への信頼感が生まれます。あるいは、医師や宗教、偽薬(プラセボ)などの外的存在を信じることでも、精神の安定や自己治癒力の向上につながります。
愛するパートナーや家族、友人、仲間など、信じられる相手や存在があるだけで、人は強くなれます。それは、愛する存在への信仰ともいうべき「信じる心」によって生まれる力なのです。
プラセボ効果とは
プラセボ効果とは、実際には有効成分がない薬や処置でも、「効く」と信じるだけで症状が改善する現象のことです。たとえば、膝の手術を受けたと信じて偽の手術をされた患者のうち、約7割が痛みの軽減を報告しています。さらに、パーキンソン病やうつ病といった脳の病気でも、プラセボが実際の薬と同等の効果を示すことがあります。
臨床医学や医療の現場において、プラセボは実は非常に幅広く活用されています。「効果がある」と信じることで脳内のドーパミンが通常の3倍も分泌されることもあり、体温や心拍数の調整、免疫力の向上まで起きるのです。まさに人体の神秘ともいえる不思議な現象ですが、実は科学的な人体メカニズムにより生じる現象なのです。
ノセボ効果とは
一方で、否定的な思い込みが逆に体調を悪化させる「ノセボ効果」も存在します。たとえば、「この薬は副作用が強い」と聞いただけで頭痛や吐き気を感じる──といった現象です。心霊スポットに出掛けて実際に気分が悪くなるというのも、典型的なノセボ効果です。
「自分は病気だ」「治らない」と信じてしまうと、実際に免疫機能が低下し、病状が悪化することさえあります。これは誰にでも起こりうる現象であり、感受性の高い人だけに限りません。
さらには、ノセボ効果だけで人の命まで奪ってしまう事例もあります。それがいわゆる「呪い」の効果です。

プラセボとノセボについて簡単に説明しましたが、「健康の秘訣は「思い込み」だった⁉ 心が体を生かす人体の神秘」では、プラセボとノセボについて具体的な事例を交えて詳しく解説しています。気になるなる方は併せてご覧ください。
思いやりが生む治癒力

プラセボとノセボの基本的なメカニズムを理解すれば、誰かの励ましの言葉や応援の言葉などのポジティブなメッセージや、悪口や非難などのネガティブなメッセージが、心と体にどのように作用するのかがイメージしやすくなります。
たとえば、人は誰しも、優しさに触れると心が和らぐものです。科学的にも、親身になって話を聞いてくれる医師、心配事に耳を傾けてくれる友人がいると、それだけで体が反応を示すことがわかっています。落ち込んでいるときに誰かから慰められると、それだけでどこか救われるような気がしますよね。
丁寧な説明や共感的な態度は脳の報酬系を活性化させ、プラセボ効果を高めます。「自分は大切にされている」「守られている」という感覚が、免疫力を高め、ストレスホルモンの分泌を抑えるのです。
このように、人間の体の状態やコンディションは、思考や感情によって分泌されるホルモなど神経伝達物質の影響を受けて変化します。細胞生物学のプロフェッショナルであり作家でもあるブルース・リプトン博士は、環境や信念はDNAの発現にも影響を与え、健康な細胞を育む「培地」となる──と主張しています。
ポジティブな感情はエンドルフィンやオキシトシンを分泌し、体全体の細胞環境を整える一方で、恐怖や怒り、不安などのネガティブな感情は、コルチゾールやアドレナリンを分泌し、細胞にダメージを与えるのです。
博士は一部の研究者から「疑似科学的である」とされており、実際におよそ30年にわたり、査読付きの医学雑誌に独自の科学研究を発表していません。しかし、「思考」や「潜在意識」については、非常に興味深い考察を展開しています。
事実、本項でこれまで解説してきたように、うれしい出来事や悲しい出来事が心身にどれだけの影響をもたらすかは、私たち自身が身をもって知っているはずです。
統括すると、病気の際には薬が必要かもしれませんが、それ以上に必要なのが「環境」であるということ。そして、人生のさまざまな出来事を心がどう“解釈”するかが重要です。
脳は、あらゆる出来事に対して反応します。たとえば目の前にいる人を「好き」だと認識すればオキシトシンやエンドルフィンなどの幸福ホルモンを分泌し、血液を通じて全身にそれを運びます。
一方、「嫌い」と思えば脳がストレスホルモンの分泌を指示し、身を守る体勢に入ります。幸福ホルモンが全身に運ばれれば心身のコンディションが良くなりますが、ストレスホルモンが運ばれれば心身がダメージを受けやすくなるのは言うまでもありません。
つまり、「物事を心がどう解釈するか」によって体(脳)の反応が変わるということ。
同じ出来事が起こったとしても、その出来事をどう解釈するか、どう受け止めるかによって体に起こる反応がまったく変わるのです。
健康は心から始まる ~人生を変えるマインドセット~
「人生を楽しんでいる人は医者にかかる回数が少ない」と言われるように、人生を前向きにとらえ楽観的に生きる人は、病気になりにくい傾向があります。これは単なる気の持ちようではなく、心の状態が体に直接作用しているからです。
良好な人間関係、心のこもったケア、充実した仕事、安定した経済、そして幸福感—これらすべてが健康状態に影響します。ポジティブな信念は10年寿命を延ばすとも言われているほどです。
このように、私たちの心には、薬や手術に勝るとも劣らない強力な「治癒の力」が備わっています。その力を引き出すために必要なのは、正しい知識と肯定的な思考、そして「信じる力」です。
体調が悪いとき、薬に頼る前にまずは自分の心を見つめてみましょう。「自分は良くなる」と信じるだけで、細胞が目覚め、脳が反応し、体が自らを癒し始めるはずです。


