現代の忙しい生活では、平日に不足した睡眠を「寝だめ」で補おうとする人が少なくありません。しかし、この寝だめ習慣が、実は健康や日中のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、最新の睡眠研究をもとに、寝だめがもたらす影響や理想的な睡眠リズムの整え方を詳しく解説します。休日の睡眠の取り方を見直し、より健康的なライフスタイルを手に入れましょう。
休日の「寝だめ」は本当に疲れが取れるのか?

最新の研究によると、休日に寝だめをするとサーカディアンリズムが乱れ、翌週のパフォーマンスが低下するだけでなく、気分障害や生活習慣病リスクを高めることが明らかになっています。
サーカディアンリズムとは、約24時間周期のサイクルで変動する生理現象で、「概日(がいじつ)リズム」ともいわれます。わかりやすく言うなら「体内時計」です。
寝だめをするとこのリズムが崩れてしまい、パフォーマンスだけでなく免疫機能も低下し、体調を崩しやすくなります。当然、そんな状態で仕事に臨んでも、大きな成果をあげるのは難しいでしょう。
なぜ寝だめが逆効果なのか?睡眠リズムの乱れがもたらす影響や、健康的な睡眠習慣の作り方について詳しく見ていきましょう。
休日の寝だめがもたらす3つのデメリット

最新の睡眠研究によると、寝だめは一時的な回復感をもたらすものの、長期的には健康やパフォーマンスに悪影響を及ぼすことが明らかになっています。
特に、「睡眠リズムの乱れ」「睡眠の質の低下」「代謝の異常」といった3つの大きなデメリットが指摘されています。それぞれの影響を詳しく解説し、なぜ寝だめが逆効果なのかを科学的根拠とともに紹介します。
デメリット1.「ソーシャル・ジェットラグ」により月曜日の朝がつらくなる
休日に遅くまで寝ると、平日の起床時間と大きなズレが生じます。このズレは「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」といい、海外旅行の時差ボケと同じような影響を引き起こします。
ソーシャル・ジェットラグとは、社会生活上における時刻と、個人の生物時計の性質(睡眠、生理機能リズムの位相など)の不一致によって体調不良に陥った状態を指します。時差ボケが典型的です。海外旅行に出掛けたことがある人なら、時差ボケのつらさがよくわかると思います。寝だめによってサーカディアンリズムと睡眠恒常性(必要睡眠量)が乱れると、まさに時差ボケと似たような状態に陥るのです。
ソーシャル・ジェットラグが生じると、月曜日の朝の目覚めが悪くなり、体内時計が狂うせいで1週間ずっと眠気が続きやすくなります。そして、仕事や学業の集中力が低下します。
スタンフォード大学の西野精治教授は、「寝だめによる体内時計のズレが生活リズムを乱し、翌週のパフォーマンスを著しく低下させる」と警告しています。
デメリット2.睡眠の質が低下し、かえって疲れが溜まる
「休日に10時間寝たのに、なぜか疲れが取れない……」と感じたことはありませんか?
これは、長時間の睡眠がノンレム睡眠とレム睡眠のバランスを崩し、睡眠の質を低下させているのが原因です。
長時間の睡眠を取ると、深い睡眠(ノンレム睡眠)が減少し、脳の回復が不十分になります。その結果、目覚めが悪くなり、倦怠感が続くのです。また、体内時計がリセットされないため、夜の寝つきが悪くなるなど、パフォーマンスが上がるどころかむしろデメリットばかりです。
デメリット3.代謝が乱れ、肥満や生活習慣病のリスクが高まる
コロラド大学睡眠研究所のケネス・ライト所長の研究によると、不規則な睡眠は血糖値のコントロールを乱し、肥満や糖尿病のリスクを高めることが明らかになっています。
寝だめにより睡眠が不規則になると血糖値が上昇しやすくなるため、糖尿病のリスク増加するのです。また、成長ホルモンの分泌が乱れ、脂肪燃焼が低下しやすくなります。さらに、睡眠リズムが崩れることで食欲をコントロールするホルモン(グレリン・レプチン)のバランスが崩れ、暴飲暴食を招きやすくなるというリスクも。
長時間の睡眠は「健康的」と思われがちですが、実は適切な睡眠時間とリズムが、体調を整えるカギなのです。
免疫力を上げる睡眠法

寝だめがパフォーマンスだけでなく、免疫力をも下げることがよくわかりました。では、休日の睡眠リズムを崩さずに健康を維持するには、どうすればよいのでしょうか?
次の5つの習慣を意識してみましょう。
- 休日も同じ時間に起床・就寝する
- 朝起きたらすぐに日光を浴びる
- 昼寝は15~30分に抑える
- 就寝前のスマホ・PCを控える
- 就寝前のリラックス習慣を取り入れる
休日も、いつもと同じ時間に起床・就寝して規則正しい生活リズムを意識することで、サーカディアンリズムを保ち、ソーシャル・ジェットラグを防ぐことができます。
また、起床したらすぐにカーテンを開け、ベランダで軽いストレッチをしたり、軽い散歩をしたりすることで体内時計がリセットされ、心身の自然な覚醒を促すことができます。これは、サーカディアンリズムの維持やソーシャル・ジェットラグの予防にも効果的です。
昼寝をする場合は、長時間だと夜の睡眠に悪影響を及ぼすため、15~30分程度の短時間で脳をリフレッシュするのがおすすめです。
なお、就寝前のモバイル機器の使用は、ブルーライトによってメラトニンの分泌が抑制されるほか、脳を覚醒させ興奮させるため、寝つきが悪くなります。就寝1時間前はスマートフォンやPCの使用を控え、読者やストレッチ、アロマなどでリラックスタイムを設けましょう。
どうしても寝だめをしたい時の「最適な方法」

「どうしても疲れていて、休日に多く寝たい…」という場合は、寝だめのやり方を工夫することで、悪影響を最小限に抑えることができます。
人間の睡眠は、90分周期で深い眠りと浅い眠りを繰り返します。休日に寝る時間を延ばすなら、90分の倍数(例:6時間、7.5時間、9時間)に調整すると、スッキリ目覚めやすくなります。
休日の夜ふかしは避け、朝の起床時間を少し遅らせる程度にとどめると、体内時計への影響を抑えやすくなります。
夜の睡眠に加え、15~30分の昼寝で疲労回復を補うと、リズムを崩さずに休息を確保できます。
「寝だめ」よりも「毎日の睡眠習慣」を整えよう!
寝だめはサーカディアンリズムを見出し、ソーシャル・ジェットラグによる健康リスクを高めることがわかりました。食いだめができないように、人間の体は寝だめができるようにデザインされていません。
とはいえ、睡眠は副交感神経を優位にし、免疫機能の調整力を高めてくれるのも事実です。感染症や炎症など、何らかの不調がある場合は、しっかりと寝て治すことも大切です。
一方で、過眠によるリスクやデメリットもしっかりと理解し、メリットとデメリットを天秤にかけて最適な選択を行いましょう。
| 寝だめのメリット | 寝だめのデメリット |
|---|---|
| 免疫力の向上 | サーカディアンリズムの乱れによる不調 |
| 一時的な疲労回復・睡眠負債の軽減 | ソーシャル・ジェットラグの発生 |
| 記憶力や認知機能の短期的な向上 | 気分障害や生活習慣病リスクの増大 |
| ─ | 睡眠の質の低下 |
| ─ | 代謝の乱れ・肥満リスク増加 |
「寝だめ」に頼るのではなく、日々の睡眠習慣を整えることが、健康とパフォーマンス向上の鍵です。規則正しい睡眠リズムを守り、エネルギッシュな日々を手に入れましょう。
【参考サイト】
・J-STAGE「社会的ジェットラグをもたらす健康リスク」
・朝日新聞GLOBE「寝だめ、実は要注意 スタンフォード大・西野教授に聞く「睡眠負債を作らない方法」」
・CNN.jp「週末の「寝だめ」は逆効果? 健康への悪影響指摘 米研究」


