私たちは日々、さまざまなストレスや困難に直面しています。
仕事のプレッシャーや人間関係、予期しないトラブルなど原因はさまざまですが、いずれにせよストレスが体に与える影響は計り知れません。
実は、病気になるかどうかは、単にストレスの存在だけではなく、それにどう向き合い、どのように捉えるかに大きく左右されます。
つまり、大きなストレスにさらされていても、現状を前向きに捉えて希望的観測を持つ人は予後が良くなりやすく、逆に悲観的でネガティブな人は症状が悪化しやすい傾向があるということです。
今回は、ストレスと免疫力、そして健康を守るための心構えについて考えていきます。
ストレスが免疫力に与える影響

ストレスは、私たちの免疫システムに直接影響を与えます。
同じ環境下で同じ病原菌にさらされても、ストレスを強く感じている人の発病率は、ストレスが少ない人に比べて4倍も高いという研究結果があることからもわかる通り、ストレスは私たちの健康リスクに大きく関与しているのです。
アメリカのカーネギーメロン大学の免疫に関する研究や、同大学のシェルドン・コーエン博士が行った免疫に関する実験においても同様の結果が報告されています。
さらに、慢性的に気分が落ち込んでいると、体内に潜んでいるウイルスが活性化しやすくなることもわかっています。
たとえば流行風邪に感染しても、それを気に留めずいつも通りに過ごしている人は軽症で済みやすく、逆に風邪をひいたことを必要以上に深刻に受け止め、ふさぎ込んで寝込んでしまう人は重症化しやすいということ。少し極端な例ではありますが、「病は気から」という言葉が昔からあるように、人の気分や感情、態度と免疫機能には確かな相関性があります。
一方、たとえ病に伏して落ちこんでいても、家族や友人の支えを実感し、心理的に安心できている人は、ストレスにさらされても発病率が低くなる傾向があります。
このように「ストレスをどう捉えるか」によって、健康状態は大きく変わるのです。
ピンチをチャンスと捉える人は病気になりにくい

逆境を「成長の機会」と捉える人は、そうでない人に比べて病気に対する抵抗力が高いことがわかっています。
たとえば、政情不安や革命から逃れてアメリカに移住した中国やハンガリーの難民たちは、新しい生活を「チャレンジ」として受け入れ、多くの障害を乗り越えながら健康で長生きしました。
このことからもわかるように、ストレスを「避けるべき敵」と考えるのではなく、人生の一部として受け入れ、それを成長や経験の機会と見なすことが重要です。ポジティブな視点は免疫力を高め、ストレスの影響を軽減します。
健康を守るために重要な「心のレンズ」

病気に負けないためには、物事をどう解釈するか──つまり「心のレンズ」を変えることが重要です。
心のレンズをどうやって変えればいいのか?いくつかの具体例をご紹介します。
・ピンチはむしろ「学ぶ機会」としてポジティブに受け止める
・トラブルは「解決した先にさらなる発展がある成長機会」と捉える
・どんなに頑張っても2割の人間には嫌われるということを知る
・不安や心配の97%は実際に起こらないことを知る
・「相手に失望させられた」ではなく「自分が勝手に期待し過ぎた」と考える、など
上記は一例ですが、「心のレンズを変える」というのがどういうことか、ニュアンスはおわかりいただけるかと思います。
さて、同じ状況にあっても、「ストレスはコントロールできる」と考える人の体には、以下のような反応が起こります。
- コルチゾールやノルエピネフリンの分泌が減少し、免疫機能が向上する。
- ポジティブな感情を引き出すドーパミンが活性化し、気分が向上する。
逆に、ストレスを克服できないと感じる人は、神経伝達物質のバランスが崩れ、動脈硬化や心臓病、癌などのリスクが高まることもわかっています。
ストレスを克服するための具体的な方法

ストレスにうまく対処するために、つまり「心のレンズを変える」ためには、次のようなアプローチが効果的です。
問題を悲観的に捉えない
ストレスは避けられないものと認識し、冷静に対処することで、生理的な緊張が緩和されます。
「何とかしてこのストレスから逃れたい……!」と願うのではなく、「このストレスはもはや不可抗力で運命的なものなのだから、受け入れた上でどうするべきかを考えよう」という思考に持っていくイメージです。
「あきらめ」とよく似ていますが、悲観的な感情はなく、むしろ発展的かつ生産的な志向に基づく選択です。
行動を起こす
人間は、何も行動しないでいると自己効力感が薄れ、自己否定的になってしまいがちです。心のレンズを変えるには、小さなことでも行動を起こし続けるのが効果的です。
特に解決可能な問題については、小さな前進を繰り返すことで、状況を変えられる感覚が得られます。
達成が難しいミッションにおいても、仲間や家族、友人などと連携しながら前進することで、達成感だけでなくチームとしての連帯感や一体感も生まれます。この感覚は、人生を生きる上での自信や安心感にもつながり、心身のコンディションに良い影響を与えます。
リラクゼーションを取り入れる
心身をリラックスさせる習慣を取り入れることで、ストレスホルモンを抑制しやすくなります。
自分に合うリラクゼーション法を取り入れるのが理想的ですが、手軽に取り組みやすいものとしては、ヨガやストレッチ、瞑想、ウォーキングやスポーツジムでの筋トレや運動などがあげられます。
こうした習慣は睡眠の質を向上させたり、自律神経を整えたりする効果にも期待できるため、健康的なライフスタイルを実現する上でぜひとも取り入れたいところです。
目的を持つ
目的や目標を能動的に見出す心構えも、強靭なメンタルを養う上で効果的です。
たとえば「この仕事は社会に役立つ」「家族のために頑張る」など、自分の行動に意味を見いだすことで、ストレスに打ち勝つ力を引き出しやすくなります。「この大仕事を終えたら自分へのご褒美を買うぞ!」と決めると、不思議と力が湧いてくる感覚がわかる方が多いでしょう。
逆に、ただ言われた仕事を言われたままにこなすだけの受動的な作業を繰り返していると、メンタル的なタフさが養われませんし、コンディションも低下しやすくなります。
「やる気」は、ストレスに対抗して免疫力を高める優秀な素材の一つなのです。
「準備ができている」と感じることの重要性

「準備万端である」と感じることも、ストレスを軽減する大切な要素です。
第二次世界大戦中の兵士たちを対象とした研究では、戦闘に向けてしっかり訓練を受けた兵士ほど、ストレスレベルが低く健康であることが確認されています。また、軍隊や緊急対応職が「ストレス免疫訓練」を導入しているように、適切な準備や訓練がストレスを軽減し、パフォーマンスを向上させることは、既によく知られています。
日常生活でも、計画を立てたりスキルを磨いたりすることで、「自分はこの状況を乗り越えられる」と感じることが、ストレスを大幅に軽減する鍵となります。
免疫力を高める生き方とは
免疫力を高め、病気に負けない生き方を実現するためには、ストレスを避けるのではなく、ストレスと上手に向き合い、活用する心構えが必要です。
ストレスをチャンスと捉え、自分の力でコントロールできる感覚を持つことが、健康への近道となります。そして、その過程で家族や友人との支え合いや、日々の目的意識を持つことが、大きな力となるでしょう。
免疫力を高めるのは特別な薬や治療ではなく、日々の「心の持ち方」や「行動」です。この記事をきっかけに、あなたの人生をより健やかで前向きなものに変えてみませんか?


